シナリオ☆おひとり雑技団

過去のシナリオ置き場です。無断転載はお断りしています。感想などはどんどん受付けています。

20枚シナリオ 『教師』

宇多田ヒカルさんはデビューしてからずっと好きな唯一無二のアーティストさんなわけですが、アルバムリリースされたばかりの、二時間だけのバカンスがとっても好きすぎて、ちょっとかなり影響受けた作品ですね、これは……

 

楽しみは少しずつ……☆

 

 

「恋は溺れてからが本番」

 

★人物表

田浦充(31)高校教師

藤本雫(16)女子生徒

藤本有香(46)雫の母

田浦雄蔵(67)田浦の父

 

 

○繁華街・熟女バー・中(真夜中)

   人がまばらな店内、しみったれた照明

   や音楽。ボックス席で、50代くらい

   のホステスたちに囲まれている田浦充

   (31)。充の顔は既に真っ赤である。

ホステス「明日は月曜日だっていうのに」

充「いいじゃあないの、僕が心から落ち着け

 る場所はここしかないんだから」

   充の携帯電話が鳴り、ホステスが鞄か

   ら勝手に取り出し、充に手渡す。

充「クミちゃん、ありがと。あれ、誰かな」

ホステス「なあに? 良い人が出来たの?」

   充、受話器に耳を当てているが、次第

   に青ざめていく。

充「……え、あ、それ、本当に親父ですか?

 はい、田浦雄蔵です」

   

○田浦の家・居間(朝)

   ダイニングテーブルで向かい合って座

   っている充と雄蔵。静かに朝食をとる。

充「ねえ、本当に昨日の記憶、ないの?」 

雄蔵「……ああ」

充「それでさ、昨日、隣の山田さんに言われ

 たんだけど、日中心配だからさ、ヘルパー

 さん頼もうかと思うんだけど」

雄蔵「……俺はまだ67だ。足も腰もぴんぴ

 んしておるのに、ふざけるな」

   雄蔵、立ち上がり、席を外す。充、静

   かなため息をつく。

 

○女子高・中庭

   ベンチに座って、缶コーヒーを飲みな

   がら、ぼーっとしている充のところに、

   女子生徒が複数かけつけてくる。

女子1「先生ってまだ結婚しないの?」

充「いきなり何だよ」

女子2「数学の小西とか、必死で婚活してん

 のに、先生は飄々としてるから」

充「別に俺はまだそういうのは……」

女子3「ファンクラブのOBの先輩とも盛り

 上がってて、先生に彼女っぽいのが出来た

 ら、すぐに報告しろって言われてるんです

 よ。で、真相は?」

充「ないない。あ、お前ら、古典の単語テス

 ト、ひどかったぞ。再試受けるか?」

   女子達、顔を見合わせて、笑いながら

   駆け出していく。

充「百人一首でテストだからな!……呑気で

 いいなあ」

 

吹奏楽部・部室(夕方)

   部員達がおのおの楽器を吹いたり、叩

   いたり、練習している。

   生徒の間をゆっくり歩いて見る充。

   サックスを吹くのをやめて藤本雫(1

   6)が顔を上げる。

雫「先生、個人レッスンいくらですか?」

充「また言ってんのか」

雫「だって、私一番下手じゃないですか、こ

 れじゃ大会で足引っ張ってしまうから」

充「だからって何で個人レッスンなんだ」

雫「ケチ」

充「何とでも言え」

   充、雫の頭を軽くこづく。雫は下を向

   き、顔を赤くしている。

 

○田浦の家・和室(夜)

   雄蔵が布団の上で眠っている。

   その傍ら、座って見守る充。

充「……母さんが生きててくれたらなあ。っ

 て、俺はほとんど覚えてないけどさ」

   充、立ち上がって、部屋を出る。

○同・居間(夜)

   介護業者のパンフレットを真剣な表情

   でめくる充。  

 

○女子高・教室

   古典の例文を黒板に書いている充。女

   子生徒たちの小さな笑い声に振り向く。

充「誰だ、私語してるのは」

女子4「先生、源氏物語紫式部って経験豊

 富だったんですか~?」

女子5「光源氏みたいな男に騙されて、ああ

 いう屈折した話を書いたんじゃないかなっ

 て話してたんだよね」

女子4「マザコンロリコンで、結構変態」

充「ああ。お前ら、結構ちゃんと勉強してる

 んじゃないか」

女子5「先生はどっち?」

充「フザけてないで、授業に集中!」

   女子生徒たちはまだひそひそ話して盛

   り上がっている。

 

○田浦家・居間(夜)

   テレビを見ている雄蔵、その雄蔵を観

   察するように離れて見ている充。

   チャイムの音が鳴り、充、立ち上がる。

○同・玄関・内外(夜)

   玄関のドアを開けると、半身を濡らし

   た藤本有香(46)が後ろを向いて、

   傘の雫を開いて掃っている。

充「あの、ヘルパーさんですよね?」

   有香、振り返って、目を開く。

有香「え!? 田浦先生?」

充「あ、……ど、どうも。今日はどうして」

有香「私です。ヘルパー。よろしくお願い致

 します。あ、生徒の母親が家に出入りして

 たら、お仕事に支障出たりしますか? 代

 わりの担当をつけましょうか」

充「あ、いえ。大丈夫です。父が中におりま

 すので、とりあえず中へ」

有香「はい。失礼します」

   有香、タオルを取り出し、頭から順に

   水分を取る。有香のうなじ、丸い背中

   を見て、喉を鳴らす充。

 

○路上(夜)

   雨上がりの夜空に星が煌く中、有香が

   歩いている。後ろから追いかける充。

充「藤本さん!」

   充の手には有香の傘。

有香「あ! 私ったら。先生、わざわざ有難

 うございます」

   受け取って深く礼をする有香。

充「あ、いえ。全然。おやすみなさい」

   慌てて礼をして、逃げるように駆け出

   す充。

有香「おやすみなさい」

   少ししてから振り向く充。

   有香が手を振っているのを見て、充、

   照れながら笑う。

 

吹奏楽部・部室(夕方)

   部屋の隅で書類整理をしている充。

   雫が周りを気にしながらやってきて、

雫「ねえ、先生」

充「お、おう」

雫「お母さんが先生のおうちにヘルパーで

 行ったって聞いたよ」

充「お前、他の奴に広めてないよな?!」

雫「な、何、その必死な感じ……」

充「……親が介護受けて、それが生徒の親と

 か、色々言われそうだろ。藤本のお母さん、

 すごく良い人だな。お前の忘れ物を持って

 きてくれた時に見かけたくらいだったから、

 最初わかんなくてさ」

雫「聞いてもないのにベラベラ喋って変よ」

充「えっ」

雫「クッキー。焼いた」

   雫、小さな袋を充に差し出す。

 

○田浦家・居間(夜)

   和室の襖を静かに閉める有香。

   充、ソファに座っている。

有香「特に問題はなかったので、今日はこれ

 で失礼しますね」

充「ありがとうございました」

有香「あの、先生。娘のことなんですが」

充「え?」

有香「あの子、先生の大ファンで、昨日もせ

 っせとクッキーを焼いていまして、あの、

 ご迷惑でしたらはっきり言って下さいね」

充「いや、有難く頂きました、はい」

有香「ほら、先生にだって、良い人だって

 いるでしょうから」

充「あ、いえ、そんな人はいません」

有香「あら、意外。おモテになりそうよ」

充「いいなと思う人にはモテないもんで」

充「僕、本当は……」

   ゴキブリが床を走り、それを見た有香

   が悲鳴をあげて、充にしがみ付く。

有香「ゴキブリ!!」

充「ご、ゴキブリ?!」

   充、しがみ付いている有香を見下ろす。

有香「(はっとして)す、すいません」

 

○(充の妄想)田浦家・居間

   慌てて離れようとする有香を抱きしめ

   る充。抗うものの、顎を持ち上げられ

   口づけを受けてからは身を任せる有香。

雫の声「何してんの!?」

   声のした方へ顔を上げる充と有香。

   開けられたままの居間の窓の外、庭に

   立って、こっちを凝視している雫。青

   ざめて、固まる充と有香。

雫「……私の気持ち、知ってるくせに……絶

 対許さない!!」

   雫が駆け出していく。充、追いかける。

 

○元の・田浦家・居間(夜)

有香「(はっとして)す、すいません」

   充、有香の肩にやっていた手を離して

   笑顔で首を振る。

充「男所帯でろくに掃除も出来ていないもん

 で、ゴキブリなんか……申し訳ないです」

有香「いえ……」

   有香が熱っぽい目で充を見上げる。

   充、それに気づかないフリをする。

最近見たDVD感想まとめ♪

最近新作とか準新作借りているので、ゆるっと感想まとめておこう。。。

 

ブリッジ・オブ・スパイ (2015)
BRIDGE OF SPIES

監督:スティーヴン・スピルバーグ

 

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ブリッジ・オブ・スパイ - 作品 - Yahoo!映画

 

大好きなトム・ハンクスが出ているので借りたけど良作でした。

戦時中の話です。実在する人をモデルに作られているので、見終わった後に

しみじみしました。交渉がメインなので派手さはないですが、時代背景だけに

真剣に見入りました。★4つ。

 

★母と暮せば (2015)

監督:山田洋次

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母と暮せば - 作品 - Yahoo!映画

 

大好きな嵐の二宮くん見たさに借りたけどボチボチかな。黒木華ちゃんの好演が見られます。長崎という舞台、原爆……重い中、ほっこりするといえばする。ただ、二宮くん演じる息子の幽霊設定がややひっかかる。戦争で家族を亡くしてひっそりと暮らす主人公がとにかく切なかった。★3つ。

 

★キャロル (2015)

CAROL

監督トッド・ヘインズ

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キャロル - 作品 - Yahoo!映画

百合っていうのは知ってて、どんな話かなと思って観てみたけど、とにかく切ない。

主人公がひかれる美しい人妻キャロルとの旅、せつない。そしてとにかく美しい二人。

ファーストシーンと最後のほうのシーン、すごく構成が素敵だった。個人的にはとても好きな作品。★4つ。

 

 

 

20枚シナリオ 『記者』

私の中で、記者は全般ゲスな人のイメージなのですが、

そういう意味で、福山さん主演の映画「スクープ」が気になってます。

でも直近で観たいのは「怒り」です。

感動して大好きになった「君の名は」に続いて、観たい映画ばかり、、、

 

さて、課題アップします><

 

 

「ソー・ニアリー・スクープ」

             

★人物

半田 吾郎(43)週刊誌『朝日』の記者

半田 道子(46)吾郎の妻

半田 省五(13)吾郎の息子

海山 拓(55)情報屋

佐倉 君江(42)主婦

 

○喫茶店

   薄暗い照明の下、ボックス席で、顔を

   突き合わせている男が2人。くたびれ

   たスーツ姿の半田吾郎(43)と、帽

   子を目深に被っている海山卓(55)。

   吾郎は鉛筆の先をぺろっと舌先で舐め、

吾郎「それは本当か」

海山「げへへへ」

吾郎「このネタが本物ならね。一面スクー

 プだ……まさか、主婦が……」

海山「暇つぶしで死体解体業とは、ね」

 

○アパート・半田家・トイレ~廊下(夜)

   資料を読み込んでいる吾郎。ノックの

   音に顔を上げる。

道子(声)「いつ出るの?」

吾郎「んあ?! まだ、踏ん張ってんだよ」

道子(声)「出たら換気しといて下さいね」

吾郎「(ぼそっと)……専業主婦の分際で」

   道子の足音が去っていく。

吾郎「みんな俺をバカにしやがって……」

   トイレから出て、廊下を歩く吾郎。

   息子の省吾の部屋の前で立ち止まり、

   乱暴にドアをノックする。

吾郎「おい、いつまでそこに居るんだよ!

 たった13年で人生に絶望してんなよな」

   何かがドアに投げられる音。

吾郎「……けっ」

 

○さびれた建物・外観(夜)

T『数日後』

   黒い服に身を包み、首からカメラを提

   げた吾郎、建物を見上げる。

海山の声「顧客から依頼があると、その主婦

 達は、とある場所で解体作業を行うのは分

 かってますから。げへへへ」

   × × ×

   忍び足で、建物の周りを歩く吾郎。額

   から汗が滴り落ちる。

吾郎「(ブツブツと)こんな不気味なところ、

 さっさとズラかりてぇな」

   ごつっと音がして、吾郎の視界は真っ

   暗になる。

 

○さびれた建物・どこかの部屋(夜)

   吾郎は目隠し、口にガムテープ、手足

   に縄をかけられ、床に転がっている。

吾郎N「……なんだ、この匂いは」

   吾郎の頭の近くに、血が流れていく。

   口元に血が流れ、吾郎はうっと呻く。

 

○半田家・浴室(夜)

   半田道子(46)の後ろ姿。ごしごし

   と洗っている。

道子「やっぱり腰にくるのよね~」

 

○さびれた建物・どこかの部屋(夜)

   芋虫のようにうごめく吾郎。黒いマス

   クで顔を隠した女達が集まってくる。

   その中の、佐倉君江(46)はふうと

   ため息をつく。

君江「一日に何体さばけばいいっての」

女1「あのウロチョロしてたデブはもう解

 体済んだし、さっさと終わらせよう。明

 日、子供の参観日なんだって」

女2「リーダー、これ以上バレるとまずい」

君江「こいつの正体は……っと」

   君江、吾郎の服のポケットを漁る。

吾郎N「何なんだ、こいつら。何で、こんな

 に冷静なんだ?! まずい、殺される!」

   吾郎が暴れだすので、女1が頭を蹴り

   飛ばす。

女1「男なら黙って殺されとけって」

女2「リーダー、名刺とかありました?」

   君江、名刺入れから名刺を取り出して、

   黙り込む。

君江「これは私の判断で決められないわ」

 

○半田家・廊下(朝)

   省吾の部屋の前に朝ご飯の乗ったお盆

   を置く道子。

道子「……ねえ、あんたはお父さんとお母さ

 んだったら、どっちを取る?」

   しーんと静かで、道子はふっと笑う。

道子「行ってくるわ」

 

○さびれた建物・どこかの部屋

   吾郎、じっと動かないでいる。

吾郎N「……日中は誰もいないんだな……、

 くそ。せっかく掴んだネタなのに。くそ」

   吾郎の服のポケットの携帯電話が鳴る。

吾郎N「み、道子か?! 電話に出たいが、

 これじゃ……せめて、会社側で俺の安否を

 気にしてくれて、ってそれはないか。たい

 したネタも上げてこられなかった俺に価値

 なんてねえよ」

   扉が開いて、黒いマスクをした君江が

   入ってくる。

君江「あんた、私の知り合いの旦那でね」

吾郎N「道子の知り合いってことか? じゃ、

 助けて貰えるんじゃ」

君江「ちょっと待ってね」

   君江が吾郎の口のガムテープを外す。

吾郎「た、助けて下さい。こ、公開なんてし

 ません! しがない3流記者の俺が欲張っ

 たのがいけませんでした! 道子に免じて

 見逃がしていただけないでしょうか?!」

君江「……道子さんに免じて、ね……」

吾郎「あの、嫁さんとはどういう」

君江「交渉しましょうか。あんたの大事なも

 のを差し出してもらうわ。じゃないと、あ

 んた記事にして、あれこれ書いちゃうわけ

 でしょ?」

吾郎「しません、しません」

君江「する、しないじゃなくて、誰か差し出

 してって言ってるの。分かる?」

吾郎「言っている意味がイマイチ」

君江「そうね。道子さんか省吾くん、どっち

 かの命を預からせてもらおうかな」

吾郎「そ、そんな。本当に記事には……」

道江「道子さんに免じて、今日は帰らせてあ

 げる。でも、私達はあなたのすぐ傍で見て

 る。分かった?」

吾郎「わ、分かりました!!」

 

○編集社・オフィス

   デスクの前に座って、新聞をチェック

   している初老の男の前に、よれよれの

   吾郎がかけよる。初老の男は睨んで、

男「半田、お前、休んでどこほっつき歩いて

 た! 減給されてえのか」

吾郎「まさか。すっげえネタが!!」

   吾郎は靴を脱いで、そこから小型のI

   Cレコーダーを取り出す。

吾郎「これ、これが証拠です」

男「な、何だってんだ」

   吾郎、にやっとする。

吾郎N「主婦は甘いな。ドンくさいおばちゃ

 ん達なんだろ、どうせ」

   男はすぐにICレコーダーをパソコン

   に繋げて確認する。

男「ん? 何もデータがないぞ」

吾郎「そ、そんなわけは」

男「お前ついに頭もいかれたのか」

   男はICレコーダーを床に投げ捨てる。

吾郎N「嘘、だろ?」

 

○編集社・外

   吾郎がよたよたと出てくる。

   道子が申し訳なさそうに近寄っていく。

吾郎「……お前、何でここに。それより、お

 前に聞きてぇことがあるんだよ」

道子「約束は守るものって習わなかった?」

吾郎「は?」

   吾郎の背後に、君江が立っている。

君江「クズは解体」

   君江、にやっと笑う。

   吾郎の背中に当てられるスタンガン。

 

○さびれた建物・どこかの部屋

   床の上で手足を縛られた吾郎、顔を上

   げる。視界に、椅子に拘束された、半

   田省吾(15)が映る。省吾の顔は涙

   で濡れている。

吾郎「な、何で、お前……」

   君江、道子はマスクをせずに立ってい

   る。道子、悲しげに笑う。

道子「本当に父親って無責任な生き物よね」

君江「私たち、別に解体なんてしたくないの

 よ。でもね、この世の中には居なくなった

 ほうが良い人間ばかりだから、必要だから。

 こんな嫌な仕事、ないわよね」

省吾「……親父、俺、まだ死にたくない」

吾郎「ど、どうするってんだよ。なんで、道

 子は繋がれてないんだよ。俺と省吾だけが、

 何で……」

君江「だって、みっちゃんは大事な仕事仲間

 だもの」

   君江、部屋の隅に置いてある工具を取

   り出す。大きなのこぎりを出して吾郎

   に見せる。

吾郎「う、嘘だよな」

   道子、にこっと笑う。

道子「マグロも人間もさばく要領は同じよ」

君江「家族を殺して生き延びるか、父親らし

 く本物の父親になって死ぬか……」

吾郎「お、お前ら、自分たちが何してるか分

 かってんのか?!」

省吾「お、お母さん、やめて、お願い!」

道子「省吾。ちゃんと見ていないとダメ。こ

 んな大人になっちゃだめだって、お母さん

 がちゃんと教えてあげるから」

   君江が道子にのこぎりを差し出す。

吾郎「お、俺が悪かった! 欲に目が眩んだ。  

 ビッグスクープをお前達に自慢したかった。 

 本当に、それだけだから!!」

   道子、首をかしげる。

道子「妻の変化に気づけないあなたには、一

 生スクープなんて無理よ」

   吾郎の目、大きく見開かれる。

20枚シナリオ『別れの一瞬』

北海道をよく舞台にするのですが旅行で2度いったきりです。

熊本は好きな俳優さんの出身地で勝手に愛しています。

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう、の影響を感じまくる作品です。。。

これが書き終わったのでようやく大好きな職業シリーズ、「記者」はすぐに思い浮かびましたーー♪書くのが楽しみです。。。

 

 

『旅は道連れ』

             

★人物

坂井ユメ(33)ОL

深田涼介(23)引越し屋

白浜昇(38)深田の先輩

 

○北海道・旭川市・街角

   片方だけ真っ赤な頬を手で押さえなが

   ら歩く坂井ユメ(33)。涙目である。

   

○同・同・ユメの部屋(夜)

   パンダの顔が印刷された段ボールに服を詰めている。ふと手を止めて、

ユメ「この服、りょーちんがうちに初めて泊まった日の服……あの時は良かったな」

   ユメ、クローゼットから男物の服を取り出して、ゴミ袋に捨てる。

ユメ「人生に無駄なもんはないって、おばあちゃんは言ってたけど、しなくてもいい恋

 愛をして、ユメは疲れ果てました……」

   ユメ、床に寝転がって、目をつぶる。

 

○マンション下・路上(朝)

   パンダの顔が印刷された引越し屋のトラックが停まる。

   白い帽子を目深に被った深田涼介(23)と白浜昇(38)がトラックから

   降りる。

白浜「単身だからさっと終わらせような」

深田「奥さんのお産近いですもんね」

白浜「気が気でなくてな」

 

○ユメの部屋(朝)

   荷造りが終わっていない部屋の真ん中で、眠るユメ。ピンポーンとチャイム

   が鳴り、跳ね起きる。

ユメ「え?! パンダはやっ」

   ユメ、近くの化粧ポーチを引き寄せ、急いで化粧をして、髪の毛を整える。

ユメ「引越し屋さんとはいえ、私もアラサー、すっぴんを晒すなんて生き恥じは」

   ピンポーンとチャイムが再び鳴る。 

 

○マンション下・道(朝)

   段ボールを抱えた白浜と深田がマンションの階段から降りてくる。

深田「何なんすかね、あの化粧の濃いオバさん。全然荷造り終わってないし」

白浜「こりゃ、予定がかなりズレそうだな」

   深田、忌々しそうにマンションを見上げる。白浜のズボンの携帯電話が鳴る。

深田「あ、俺、これ一人で持てますよ」

   白浜、手を離して、電話に出る。

白浜「な、何だって?!」

 

○ユメの部屋(朝) 

   黙々と段ボールに皿を詰めているユメ。深田も違う段ボールに荷物を詰めるの

   を手伝っている。 

ユメ「ほ、本当にすいません。遅くなって」

 

○マンション下

   引越し屋の車に乗り込む深田。ユメ、

   頭を下げる。

ユメ「色々ありがとうございました」

   深田、帽子をとって黙って頭を下げる。

ユメ「って、あれ? あれれ」

   ユメは持っている小さな鞄の中を漁り、

   絶望的な顔。

ユメ「(おずおずと)このトラック、今日中に熊本まで走りますか?」

深田「そうっすけど」

ユメ「あ、あの、乗せてってください?!」

深田「はあ?!」

 

○高速道路・トラック・車内

   黙々と運転する深田。ユメ、深田をちらちらっと見る。

ユメ「あの、上司の人、怒ってました?」

深田「言ってないっす」

ユメ「え?」

深田「一緒に来てた白浜さんが奥さんの出産に立ち会うために抜け出したのも黙ってる

 から、もういっかって思って」

ユメ「奥さん……出産……」

深田「本当はダメっすよ。でも、まあ、航空券なくしたんじゃ……熊本まで遠いしね」

ユメ「お兄さんはどこの人なの?」

深田「埼玉」

ユメ「へえ、都会なんだ」

深田「(吹き出して)いいっすね、その反応。てゆうか、お客さん、熊本出身?」

ユメ「全然」

深田「え? 仕事で転勤とか?」

ユメ「仕事はやめた。熊本に一人移り住んで、温泉で住み込みの仕事始めるんだ」

深田「……へえ」

ユメ「え、ここ食いつくとこだよ?」

深田「勘だけど、何か、重い話になりそうだから」

ユメ「良い勘の持ち主だね、若いのに」

   ユメ、トラックの窓から外を見つめる。

   深田、ちらっとユメを見る。

   × × ×

   ユメ、うとうとしていて目を開ける。

深田「結構寝ましたね」

ユメ「意外とトラックって乗り心地いいですね。トラックドライブもありだな」

深田「変ってよく言われませんか?」

ユメ「ひどっ。まあ、ちょっとだけ変わってるって言われるけど、あっ!」

深田「いきなり何ですか」

ユメ「トイレ、トイレに行かないと」

深田「次のSAまでもう少しあるっす」

ユメ「き、きてる、あと少し……」

深田「ちょ、ちょっとね、そう言うことは女の人の口から聞きたくないっす」

ユメ「もう半分女は捨てるから、ちょっと、

 半分は残しておきたいけど」

深田「……また重い話になりそうなので聞きません」

ユメ「徹底してるな……」

   ユメ、ぎゅっと集中して便意を抑える。

 

 

東名高速・SA(夕方)

   ベンチに座って、ソフトクリームを食べているユメ。缶コーヒーを買ってき

   た深田はじっと眺めている。ユメは深田を振り返ってみて、

ユメ「どうして妻は浮気をした夫じゃなくて、相手の女を一方的に責めるんだろうね」

深田「……それは一般論ですか、それとも、お姉さんの経験から?」

ユメ「もう終わったからいいんだけどね」

   立ち上がったユメに深田は向かい合う。

深田「不倫、してたんすか」

ユメ「もう終わったの」

深田「で、逃げるように引っ越すんすか」

ユメ「……引越し屋の分際で踏み込みすぎじゃない?」

深田「聞いて欲しそうな顔をしてるのは、そっちだから!」

   深田とユメはしばらく見つめあい、吹き出す。

 

○高速道路・トラック・車内(夜)

   道が渋滞しており車内は静かな雰囲気。

ユメ「うちのおばあちゃんがね、人生に無駄なものは何もないって言ってたんだけど」

深田「うん」

ユメ「あと何年か経ったら、こんなダメな恋をしていたことも良い経験になったって思

 えるのかな? 逃げるように熊本に行くことも、正しかったって」

深田「お姉さん何歳?」

ユメ「(茶目っ気たっぷりに)17」

深田「(スルー)俺、23なんだよ。だから、相談相手間違ってると思う」

ユメ「はいはい、もう言いませんよ」

深田「でもさ、旅は友連れって言うでしょ」

ユメ「『旅は道連れ、世は情け』ね。 旅をするときに道連れがいると心強いように、世

 の中を渡っていくには人情をもって仲良くやっていくのが大切って意味よ」

深田「それそれ。熊本まであと少しだけどさ、俺、結構今楽しいから」

ユメ「何よ、それ」

深田「おばあちゃんはきっと正しいよ」

   深田、ユメににこっと笑ってみせる。ユメもつられて笑う。

 

 

熊本県・郊外・路上(夜)

   暗い夜道を走るトラック。

 

○トラック・車内(夜)

深田「もう少しで着くから。いつもはむさくるしいおじさんと一緒だから、今回はちょ

 っとだけ華やかで楽しかったな」

ユメ「お世辞でもありがと」

深田「別に、嘘はつかないけど」

   ユメ、深田を見て、そして、下を向く。

ユメ「で、深田さんって下の名前、何て言うの? せっかくだから教えてよ」

深田「涼介だけど?」

ユメ「リョウスケ?! 漢字は?」

深田「涼しいに、介護の介」

ユメ「そ……そっか」

深田「なんだよ、人の名前にケチつけて」

ユメ「元彼もリョウスケだったから。あ、でも漢字が違った」

深田「……嬉しくない偶然!」

ユメ「だ、ね!」

 

○熊本・郊外・旅館前(夜)

   トラックが停まり、ユメが降りる。ユメ、運転席の深田を見上げる。

ユメ「人生に無駄はない、そう信じて私、心機一転頑張るから」

深田「……ユメさん、幸せになってね」

ユメ「どうして下の名前……あ、書いてあるか……ありがとう、色々と」

   深田、微笑し、トラックを走らせる。

   ユメ、トラックに向かって大きく手を振る。目には少し涙が浮かぶ。

ユメ「ありがとう~リョウスケって名前が嫌いにならなくて済んだよ!!」

長編シナリオ『極上イミテーション』 イントロダクション編

こんばんは^^

 

ここのブログに置いてあるシナリオはシナリオコンクールにひっかからなかったものとか雑多なものが多すぎるので、今後整理しようと思いつつ、いや、しかし、プロになったときにこれぞってネタはとっておくべきか?と悩みつつ、まだ結論がでていません。

 

読者の方、貴重なご意見をいただきありがとうございます。

 

とはいえ、公の場所なので、どう見られるかというところも意識しなくてはなと反省の極みです。

 

さて、話は変わりますが、

 

 

過去長編をまるっと載せると長いので、イントロダクション編で10Pだけ掲載してみます。(もしご興味あればお送りするので読んでください~><)

 

シナセンのS1グランプリ3次通過作品で、初めて書いた長編ものなのでト書きがめちゃくちゃですが、書きたいこと、やりたいことが明確にあった時期なので、初心に戻るつもりでそのまま掲載してあります、、、

 

*******************

 

『極上イミテーション』

あらすじ:平凡な専業主婦だった百合が近所の主婦友にそそのかされて出会い系を始めて、そこで某犯罪者を真似て、同様の詐欺まがいのことを始めてしまい……

 

※登場人物省略

 

○人気の多い繁華街

   黒いキャップを目深にかぶり、下を向きながら足早に歩く安田百合(38)。

   額には汗が浮かんでいる。

   道の途中で、百合は若い男性と肩がぶつかる。

若い男性「ぼーっとしてんなよ、おばさん!」

百合「!」

   若い男性は舌打ちをしながら百合の横を通り過ぎていく。百合はその姿には目も

   くれず、息を深く吸う。そして、肩から垂れ下がった鞄の紐を持ち、肩にかけ

   る。

   目の先に、△△銀行のATMがある。

   百合はゆっくりとATMに近づく。

   

○△△銀行のATM内

   震える手つきで機械の画面を操作する百合。鞄から通帳を取り出す。結婚する前

   の姓で『中田百合』と表紙に書いてある。

   機械に通帳を入れ、じっと待つ百合。鞄の携帯電話が鳴る。

   百合はびくっとし、携帯電話を取り出す。携帯の画面に、『福原裕二』と表示さ

   れている。

   百合は電話に出る。

百合「…もしもし」

福原(声)「百合さん、今、どこ?」

   福原裕二(35)が自分の職場の喫煙室で電話をかけている。

百合(声)「今、△△銀行のATMに来ているわ。」

   百合が携帯電話に手をあてて、小さい声で答える。

福原(声)「ぎりぎりになってごめんね。調理学校の授業料の支払い期限今日だったよ

 ね、間に合うかな?」

百合「ええ…裕二くんのおかげで」

   百合は額から流れる汗を甲でぬぐう。福原に聞こえないように静かに息を整え

   る。

   福原は背広の胸ポケットから百合の写真を出し、にやける。

福原「水くさいじゃないか。僕のお金は君のお金と思ってくれていいんだし。…早く会

  いたいな」

   百合は通帳が機械から出てきたのを取り出し、金額を確認する。そして、電話の

   向こうの福原に優しく話しかける。

百合「私もすぐに会いたいわ。…あなたが欲しい」

   記帳された通帳には、今日の日付で、55万と印字されている。

   百合はその数字をゆっくり見つめ、うっとりとした溜息をつく。

(タイトル「極上イミテーション」)

 

○安田宅・リビング(朝)

   髪の毛を後ろで無造作にたばね、寝間着姿にエプロンをした百合が朝ごはんを用

   意している。

   百合がテーブルの上に皿を並べていると、息子の一輝(12)がパジャマ姿のま

   ま、テーブルにつく。

一輝「あ!また目玉焼きが半熟になってなーい!」

百合「パパが半熟嫌いだから、つい」

一輝「一日の始まりがパサパサだとさ、しっくりこないんだよー」

   一輝はわざとらしく溜息をついて、目玉焼きをほうばる。

   夫の大地(40)も起きてくる。

大地「いっぱい食ってるかー」

   大地は一輝の頭をポンポン叩き、一輝の向いの席に座り、トーストにかじりつ

   く。百合は慌ててコーンスープを温める。

大地「牛乳たくさん飲めよ。モテる男の条件は背と年収が高いことだ。今から自分に投

 

 資しとけー」

一輝「なにそれ、パパはモテるっていう自慢?」

大地「お、俺はもうモテたってしょうがないだろう、ママがいるんだから。なっ」

   大地は百合を振り返り、笑う。百合は曖昧に笑ってみせる。

大地「ほんと感謝してもらいたいよ。今時専業主婦できる奥さんは少数派だぞ。なの

 に、働きたいだなんて頭がおかしいとしか思えないじゃないか。お前の姉さんだっ

 て、子育てしながら、ひいこら働いて苦労してるだろー?」

   一輝、百合のほうをチラっとみて、

一輝「僕の中学受験が落ち着いたら、ママのしたいようにさせてあげればいいじゃん」

百合「いいのよ。なんとなく言っただけだったから…」

   大地、百合の言葉を鼻で笑う。

大地「本当、お前は典型的なお気楽主婦だな」

   百合、黙って、大地から、顔をそむける。コーンスープをぐるぐるとかき混ぜな

   がら、下唇を噛む。

 

○安田宅・廊下

   百合が掃除機を一心不乱にかけている。遠くでインターフォンの鳴る音が聞こえ

   た気がして、掃除機をとめる。廊下から直接玄関に向かう。

   百合がドアを開けると、近所の主婦、加藤梓(35)が大きなボストンバッグを

   手から提げ、にこにこと立っている。

   百合は呆れながらも、梓を家にあげる。

百合「…いま、帰ってきたの?」

梓「うん。お土産、持ってきたよ。だって、百合さんに報告しないとデートしたって感

 じがしないんだものー」

  梓は媚びたように言い、はいっと百合にお土産を手渡す。百合は紙袋の中をすぐ覗

  き、どこに行ってきたかを確かめる。

百合「なぜ七味…」

梓「八幡屋磯五郎のやつ、うどんにかけたら超美味しいんだから」

百合「あがって。お茶いれる」

梓「はあーー、やっぱり泊りのデートは疲れるね!」

   梓がリビングに入ってきて、ソファにどかっと座る。

   百合は呑気な梓の様子をふっと笑いながら見てから、台所に行き、紅茶をいれ

   る。

   梓はリビングを見渡し、棚に飾ってある写真立てを眺める。

梓「旦那さん、相変わらず?」

百合「そんな簡単に変わらないでしょ」

   梓はソファから立りあがり、台所に立っている百合のそばまで歩いていく。

梓「自分は遊んでるのに奥さんには家にいろ、働くな!だなんて、横暴よ」

   百合はレモンを薄切りにしながら、梓に目をやる。

百合「背が高いことと年収が高いことがモテる秘訣!って息子に伝授する人だからね」

   梓はぷっと笑い、突っ込みをいれる。

梓「中身はどうでもいいのか!」

   百合は洒落たティーカップを棚から取り出し、黙々とお茶の支度をしている。梓

   はそれを黙って見ながら、おもむろに口を開く。

梓「百合さん、やろう」

百合「え、なにを」

梓「婚外恋愛よ!こ・ん・が・い!目には目を、歯には歯をよ。百合さんは知らないと

 思うけど、3丁目の枝原さんとこ、あそこもやってるから」

   百合は返事をせず、トレイに乗せた紅茶のセットをテーブルに運ぶ。

   梓は百合の後を追いかける。

梓「百合さん綺麗だし、全然いけるから」

百合「自分ができるからって人もできるだなんて思わないでよ。もう38よ?誰も相手

 

 になんかしてくれないわよ」

  梓、百合の両腕をがしっと掴み、百合を見つめる。

梓「百合さんが見ている世界は実はとても小さい世界…、それしか知らないから怖くて

 踏み出せないのかもしれないけど。私みたいに、本当に愛すべき人に愛されることだ

 ってあるんだから!」

   百合はゆっくり首を振り、笑う。

百合「小さいけど…これが私のすべてよ」

   百合はソファに腰かけ、紅茶を一口飲む。

   梓は不満そうに口をとがらせる。そして、テレビのリモコンを勝手に操作し、ワ

   イドショーをつける。

   ワイドショーでは連続殺人犯である水嶋早苗容疑者の裁判について報道をしてい

   る。

梓「あちゃー死刑だな、こりゃ」

百合「5人だっけ?未遂もかなりいるって」 

梓「それにしても、水嶋早苗のアルバム写真やばくない、私が男だったら…この顔、抱

 けないんだけど」

百合「…どうやって騙してたんだろうね…」

   梓、時計をみて、はっと思い出したようにチャンネルを変える。韓国ドラマが流

  れる。

梓「百合さん、『僕たちの旅』見よう、ほんと良いから!」

百合「勝手に変えておいて、よく言うわよ…」

   百合、台所にお茶請けのお菓子を取りに向かう。さっき見た報道が気になり、カ

   ウンターキッチンに置いてある付箋に『水嶋早苗』とメモする。

20枚シナリオ 『憎しみの一瞬』

『ゼロ銭ゼロ縁』

        

★人物

笠原 彩香(19)大学生

笠原 二郎(47)彩香の父

笠原 和子(45)彩香の母

安形 凛子(26)彩香の姉

 

 

○××銀行・△△支店・外

   通帳を手に持った笠原彩香(19)。

彩香「あと、少し……あと30万か……」

 

スガキヤ・店内(夕方)

   カウンターの中でバイトしている彩香。

   安形凛子(26)が店に入ってくる。

彩香「え、お姉ちゃん、どうしたの?」

凛子「元気にしてるかなって思って」

彩香「あと30分で終わるけど」

凛子「今日は家庭教師はないの?」

彩香「うん。だから、待ってて」

凛子「じゃ、ソフトクリーム貰おうかな」

彩香「まいどありっ」

 

○住宅街(夜)

   彩香と凛子が肩を並べて歩く。

凛子「大学出て結婚しても、まだ、奨学金払ってんだよ? たまにバカらしくなるわ」

彩香「あのバカと縁が切れてるんだから。いいいじゃん。私も早く家を出たいなあ」

凛子「あと数年の辛抱でしょ」

彩香「その前に、カナダに留学するから!」

凛子「バイト増やした理由はそれか。あんまり無理しちゃだめよ」

 

○笠原家・リビング(夜)

   ラップのかかった夕飯がテーブルの上に置いてある。その前に座る彩香、手

   を合わせてから食べ始める。

   ソファにふんぞり返って座っている笠原二郎(47)は鼻歌を歌いながら、

   ゴルフクラブを磨いている。

   彩香、ちらっと二郎を睨む。

二郎「(視線に気が付き)お前にも分かるか、このクラブの良さが……セットで50万

 や、安いもんやわ。男やったらな、プロゴルファーにでも野球選手にでもさせたるの

 に」

彩香「100万回は聞いた」

二郎「女が2人もいたら家計は赤字や、せめて良い家に嫁げばいいものの、凛子はしが

 ない公務員と結婚ときた。お前くらいは俺に夢見せてくれよ」

彩香「うちにお金を一銭もいれない人に、そんなこと言われたくない。お母さんが働い

 てくれたお金で私は大学に行けてるし」

   二郎、じろっと彩香を睨む。

二郎「この家を買ったのは俺やぞ。気に食わなんなら今すぐ出て行け」

   彩香、黙って夕飯を食べ続ける。

   二郎、立ち上がって、彩香のもとへ。

   いきなり、テーブルの上を手でなぎ払い、床に夕飯と食器が散らばる。

二郎「返事は? この家に住みたいんか?」

   彩香、しゃがみ、夕飯を手で拾う。

二郎「(イライラして)住ませてください、やろ? はよ言わんか!!」

   彩香の手の上に、二郎のはいているスリッパが振り下ろされ、彩香は二郎を

   下から睨み付ける。

二郎「この家に可愛げのある女は一人もおらんな……ったく」

   彩香、目に涙を滲ませている。

 

○同・彩香の部屋(夜)

   机に向かって、英会話を勉強している彩香。耳にイヤフォンをしている。

   壁には世界地図、国境なき医師団のポスター。白い紙に、「カナダ留学のた

   めに100万貯める!」と書いてある。

 

○N大学・外観(夕方)

   華やかな格好をした女子学生が門から出て行く。慌てた様子の彩香がその横

   を走っていく。

看護師の声「笠原和子さんの娘さんですか? 

 お母様が倒れて、救急車で運ばれました」

 

○N市立総合病院・病室(夕方)

   ベッドで眠る笠原和子(45)。隣の椅子に座り、肩を落としている彩香。

   慌てた凛子が部屋に入ってくる。

凛子「ちょっと、お母さんどうしちゃったのよ。脳梗塞?!」

彩香「倒れた時に頭を打ったみたいだけど、脳に異常はないみたい。過労だって」

凛子「……こんな日がいつか来るって思ってた。お母さんも年だし、今までと同じよう

 にガンガンに仕事してたらこうなるって」

彩香「大学、やめたほうがいいのかな……」

   和子が苦しそうに唸る。

凛子「何で私達だけが苦しまないといけないんだろうね。お金はあるのに。あのバカの

 せいで、お母さんはこんな風になって」

彩香「いっそのこと、死ねばいいのに。そしたら、保険金がおりて、お母さん働かなく

 て済むんじゃない? いっそ私達の手で」

凛子「あ、お母さん……お母さん!!」

   和子の目が開き、凛子、彩香が身を乗

   り出す。弱弱しく笑う和子。

和子「2人とも……ごめんね」

凛子「ああ、よかった!」

彩香「良くないよ、全然。だって、あのバカのせいでお母さんが」

凛子「彩香」

和子「ごめんね。お母さん、すぐ退院するから、皆で何か美味しいものでも食べに行き

 ましょう。豪華に、ひつまぶしでも」

彩香「そんなの要らない、要らないから!」

   部屋を飛び出していく彩香。

凛子「あの子、あの人と家に2人きりになるのがイヤでバイト増やしてるのかな」

和子「ごめんね、本当に……」

凛子「謝らないでよ。お母さん、すごく申し訳ないんだけど、病院代、うちから全額は

 出してあげられないかも」

和子「大丈夫よ、お母さん、念のために蓄えくらいあるし。それにさっさと退院しち

 ゃえば、そんなにかからないでしょうし」

   和子、急に頭をおさえて苦しむ。

凛子「ちょっと、か、看護師さん!!」

 

○笠原家・リビング(夜)

   ソファに寝転び、缶ビールを飲みながら、野球の試合を観戦している二郎。

   息を切らした彩香が入ってくる。

二郎「おお、早いな、今日は」

   彩香、テーブルの上のリモコンを手に取り、テレビを消す。

彩香「何やってんのよ。お母さんが倒れたの知ってるでしょ? 呑気に野球見てるなん

 て、気がおかしいんじゃないの」

二郎「帰ってきてそうそうにガミガミ。お前、男いないだろ。カリカリ、ガミガミ、

 おい、見ろよ。新しいゴルフバッグや」

   二郎、部屋の隅にあるゴルフバッグを指差して、ご満悦の顔。彩香、見るこ

   となく、二郎を睨みつけている。

二郎「いいやろう、別に」

彩香「そんな金あるなら違うことに使って」

二郎「あるとこにはあるんやな、これが(ニヤニヤ笑って)冷蔵庫に鰻あるぞ。食え」

彩香「もう、いい。話にならない!!」

   彩香、リビングを飛び出す。

 

○同・彩香の部屋(夜)

   彩香、机の引き出しを開けている。通帳を取り出し、見つめる。

彩香「お母さんが命を削って私の学費を稼いでくれていたから、私は将来の夢を見つけ

 られた……またバイトして貯めたらいい」

   通帳を机に置き、部屋を飛び出す。

 

○××銀行・△△支店・ATMの前(夜)

   彩香の後ろ姿。へやりと座り込む。

彩香「ない……どういうこと? 誰が?」

   彩香、はっとして、青ざめる。

彩香「まさか」

   彩香の携帯電話が鳴る。

   家の電話の音がそれに重なる。

 

○笠原家・リビング(夜)

   家の電話の受話器を手に取る二郎。

二郎「笠原ですが……え、しゅ、手術? こ、今晩? で、いくらかかるんですかね。なるほど。分かりました」

   受話器を置き、黙り込む二郎。

 

○N市立総合病院・オペ室前の廊下(夜)

   凛子と彩香、青い顔をして座っている。

凛子「ああ……神様、お願いします、神様」

彩香「あいつが、あいつが全部悪いのに。どうしてお母さんなの? どうして……」

凛子「今はあいつなんてどうでもいい」

   二郎がフラフラと歩いてやってくる。

彩香「今更何しにきたのよ」

   彩香立ち上がり、二郎の前に立つ。

二郎「金がいるんだろ」

凛子「来ないと思ってた」

二郎「手術に必要な金だよ。200万用意した、これで足りるだろ」

   二郎、茶封筒を取り出し、見せる。

彩香「いらない、いらない!!」

凛子「彩香、でも……」

二郎「俺にかかりゃ、数百万用意するのなんてちょろいんや。結局、俺に口答えしたっ

 て、こんな時は父親の俺が救いの神やろ」

   封筒を椅子の上に放り投げ、帰ろうとする二郎。彩香、封筒を取り、二郎の

   背中に投げつける。

彩香「一円も受け取らない。お金は私が絶対に用意する、何してでも!!」

二郎「ああ、俺にできないことがあったな。若い女にしかできないやつ、身体使えば

 簡単に稼げるじゃないか。あはははは」

   彩香、正面から二郎に掴みかかり、首を絞めようとする。凛子が慌てて制す

   るが、彩香の顔は鬼のようで、一向に手を緩めることはない。

彩香「一銭もいらない、縁を切って、お願いだから!!」 

20枚シナリオ 『裏切りの一瞬』

隠れ?ゲーマーなので書きました。

モデルはレベルファイブとかスクウェアエニックスですw

ゲームは2D派、ドラクエ4をこよなく愛していますwww(余談

 

「ペガサス・ソウル」

          

★人物

右京 つぐみ(29)ゲーム製作会社のクリ

          エイター

      (15)

麻生 宅人(43)同社の社長

石間 哲(43)同社の副社長

柄戸 あや(22)麻生の彼女

 

○商店街・おもちゃ屋・外観(夜)

   店の入り口から始まっている長蛇の列。

   ショーウィンドウに大きな文字で『ペ

   ガサス・ソウル待望の新作発売!』と

   書いてある。右京つぐみ(15)が白

   い息を吐きながら、列に並んでいる。

○株式会社レベル・スリー・自社ビル・外観

T・14年後

○同・同・廊下~社長室

   右京つぐみ(29)のスニーカーの足

   が床を勇ましく進んでいく。社長室の

   前で立ち止まり、ノックするつぐみ。

つぐみ「右京です。入室宜しいですか」

麻生の声「あいてるよ」

   つぐみ、部屋に入る。

○同・同・社長室

   広い部屋の隅にソファ、その周りには

   色々なゲーム機器が無造作に置いて

   ある。『ペガサス・ソウル』の勇者の

   キャラクターの実物大の像が部屋の隅

   に置かれ、鞄や帽子がかけられている。

   ソファにうつ伏せになり、スマホのゲ

   ームをしている麻生宅人(43)。

   仁王立ちしている、つぐみ。

つぐみ「ペガサス・ソウル10の開発を中止 

 って、どうしてなんですか? この5年間

 皆がどれだけ思いをこめて取り組んできた

 か、その思いは社長に伝わってなかったん

 ですか。納得のいく説明をお願いします」

麻生「(眠たげに)もう無理だろ。大手ゲー

 ムメーカーもスマホゲームにどんどん移行

 してる、家でゲーム機使ってプレイするの

 はもう時代遅れなんだよ」

つぐみ「昔からのファンがいます。私だって

 そうです。新作を心待ちにしてる人たちに

 何て言ったらいいんですか」

麻生「知るか。ペガソー9がこけて、ネット

 で叩かれまくったの忘れたか? 俺はもう

 懲りた」

つぐみ「ペガサス・ソウルがなくなったら私

 達はどうしたらいいんですか」

麻生「そういうのは石間に任せてる」

   つぐみ、下唇を噛み締めて、黙って、

   麻生に頭を下げて、部屋を出る。

○同・同・屋上

   煙草をふかしている石間哲(43)、

   隣で頬をふくらませているつぐみ。

石間「悪かった。経営が苦しいとはいえ、こ

 のタイミングでやめたこと、右京たちには

 悪いことをしたと思ってる。でも、社長が

 一番辛いと思うで。わしらにとってはペガ

 ソーは子供みたいなもんや。もがいても、

 もがいても、あんなブームはもう来ないや

 ろうしな。苦渋の選択やったんや」

つぐみ「副社長、ペガソー開発メンバーはこ

 れからどうしたら」

石間「他社のシェアが高い恋愛シミュレーシ

 ョンゲームに着手したいそうや」

つぐみ「ええ? うちがですか?」

石間「ペガソーに代わるヒット作が必要やっ

 て言ってな。社長のアイデアでは、ダン

 ョンと恋愛を結びつけたRPG? みたい

 なのがいいとか」

つぐみ「スマホの開発メンバーを増やさない

 と、ですね。私も勿論勉強しますが」

石間「せやねん。人件費抑えたいとこやけど、

 そこはコストかけてかなな」

つぐみ「副社長は嫌にならないんですか、社

 長に振り回されてばっかじゃないですか」

石間「麻生は攻め、わしは守り。凸凹コンビ

 がちょうどいいんや。あんまり悪く言うて

 やるな。焼肉おごるさかい」

つぐみ「メンバー全員で、ですか?」

石間「え……ま、まあ、ええわ」

   

○同・同・社長室~廊下(夜)

   部屋の隅、勇者の像の前に立っている

   麻生。右手を左の腰にやり、剣を抜く

   フリをして、ぼそぼそと呟く。

麻生「目覚めよ、ペガサス・ソウル! あく

 なき探究心を胸に、未知の世界へ」

   ドアが開き、柄戸 あや(22)が遠

   慮なく部屋に入ってくる。

あや「宅ちゃん、ご飯いこう」

麻生「(あげていた手をおろして)ああ」

あや「また、ペガソーごっこしてんの? い

 つまで少年なのよ。ねえ、お願いしてたゲ

 ーム、作れそうなの?」

麻生「あやちゃんのオーダーは社内調整中」

あや「早くプレイしたいなあ。イケボじゃな

 いと嫌よ、あたし」

麻生「俺という存在がいるくせに、二次元に

 も男が必要なのか? 贅沢ものめ」

あや「世の中のシングル女子のために、頑張

 ってよ。ね? あやのお願い」

麻生「なあ、そんなにペガソーはダメか? 

 周りの男友達とか、プレイしたことある奴

 いるだろ?」

あや「いない、いない。ゲーム機なんて持っ

 てないよ。ぜーんぶスマホで済むじゃん」

麻生「そうだよな」

   あや、麻生の腕に手をまわし、部屋の

   外へ連れ出す。

   廊下を歩いていく麻生、あや。それを

   こっそりと見送る石間。

○単身用アパート・外観(夜)

T・3ヵ月後

   ゲームのプレイ音。   

○つぐみの部屋(夜)

   暗い部屋の中、テレビに映る『ペガサ

   ス・ソウル3』のプレイ画面。勇者の

   キャラクターが草原を走っている。

   つぐみ、ゲーム機のコントローラーを

   床に置き、ため息をつく。

つぐみ「さあて、勉強すっか」

   つぐみ、床の上のスマホに手をのばし、

   他社の恋愛シミュレーションゲーム

   はじめる。

つぐみ「くっさい台詞、何よ、この髪型。

 男、みんな同じ顔じゃん。何なのよ!」

   スマホの画面に着信。石間から。

つぐみ「(電話に出て)どうしたんですか」

○バー(深夜)

   カウンター席に肩を並べて座る石間と

   つぐみ。

石間「開発、難航してるみたいやな」

つぐみ「恋愛なんて一切してこなかった集団で、毎日、萌え台詞とか、壁どん・床どん・顎くいについて研究してる段階で。社長にいくら急かされても、なかなかうまくいかないのが現状です」

石間「そうやろなって思ってて。わし、思うねんけど、うちのスタンスみたいなもの、簡単に変えてええんかなって」

つぐみ「スタンス?」

石間「わしらが作ってきたもんをさ、求めてくれるファンがおるやん。いくら恋愛ゲーが流行っているって言ったって、わしらも同じのを作らないとあかんのかいな」

つぐみ「副社長がそんな考えでいたなんて、

 ちょっと意外です。いつもクールだし」

石間「そういう立ち位置にならざるをえないやん、自然と。でも、俺、好きやねん。ペガソーのこと。守ってやりたいねん」

つぐみ「どうするつもりなんですか?」

石間「社長にやめてもらうしかない」

つぐみ「え?」

石間「それか、わしらで別の会社立ち上げて、そこでやりたいことやるか」

つぐみ「わし、ら?」

石間「右京、お前が俺には必要や」

   石間、つぐみの手を握り締める。

○株式会社レベル・スリー・自社ビル・オフ

 ィス

   パソコンに向かってタイピングしてい

   るつぐみ。壁に貼られた『ペガサス・

   ソウル』の販促用ポスターを見つめる。

   部屋に麻生が入ってくる。

麻生「右京、ちょっと」

   つぐみ、顔をあげる。

○同・社長室

   麻生がソファに座ってスマホの恋愛ゲ

   ームをプレイしている。その近くに立

   って、それを不安げに見ているつぐみ。

麻生「(顔をあげて)お前、まともに恋愛し 

 たことないだろ。ゲームのターゲット層

 に響かないわ。俺の彼女に昨日やらせた

 ら、けちょんけちょんだったぜ」

つぐみ「恋愛ですか……ですから、日々研

 究して、少しでも萌えを」

麻生「やっぱ、ペガソーメンバーには無理

 か。お前を担当から外そうと思ってる」

つぐみ「え……?」

   石間が部屋に入ってくる。

麻生「今、右京に開発中のゲームの担当を外

 れてもらう話をしたところだ」

石間「わし、もう、お前にはついていけへん。

 ペガソーメンバーには全員話をつけてある。

 今日かぎりで辞めさせてもらうわ」

麻生「急に何を言い出したかと思ったら」

つぐみ「社長、時代にあうゲームを作りたい

 なら、彼女にプロジェクトに入ってもらっ

 てください。彼女のためのゲームを作りた

 いなら好きにしたらいいじゃないですか」

麻生「おいおい、右京まで。ふざけるな」

   石間、部屋の隅の勇者の像の前に歩い

   ていく。像に手をやり、呟く。

石間「いつからやろう。夢を一緒に追いかけ

 てきたつもりが、全然違う未来を見るよう

 になってた。あくなき探究心はどこや」

麻生「……ふ、ふざけるな」