シナリオ☆おひとり雑技団

過去のシナリオ置き場です。無断転載はお断りしています。感想などはどんどん受付けています。

20枚シナリオ『弁護士』

弁護士を書くに必要な知識が皆無で、かなり誤魔化した感すごいですね。苦笑

色々突っ込みを受けそうですが、弁護士ドラマって好きです><

 

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「遠くて近い幸せ」

              

 

★人物

梅田 さくら(28)パラリーガル

新垣 類(35)弁護士

アンディ(38)フリーカメラマン

中村 玲子(28)新垣の顧客

中村 俊樹(24)俊樹の夫

遠山 奏汰(27)俊樹の弁護士

 

 

○アポール法律事務所・内

   10人程度の所員がパソコンに向かっ

   ていたり、書類を整理したりしている。

   うんざりした顔でため息をつき、伸び

   をする梅田さくら(28)。斜め前の

   席に座る新垣類(35)が声をかける。

新垣「いい加減慣れなさいよ」

さくら「こんなのに慣れたくありません」

新垣「離婚は4人に1人がする時代なんだか

 らさあ。おかげで僕たちはご飯を食べられ

 るわけで。後で、丸井食堂にでもいく?」

さくら「いきます! というか、人生で一番

 とも言える、慎重を要する決定事項である

 結婚を、みんなホイホイし過ぎなんすよ」

新垣「……バツ3の僕へのあてつけかな?」

さくら「何で毎日のように証拠写真の情事写

 真や盗聴された生々しい声を聴かないとい

 けないんですか?!」

新垣「じゃ、早く試験に受かって、自分のしたい業務につけるようにするんだね」

さくら「それ言われると何も言えないっす」

新垣「来週には相手方との話し合いだから、

 さっさと資料まとめちゃってよ」

さくら「承知しました」

 

○小さなアパート・外観(夜)

   道を歩いてきたさくら、アパートを見

   上げる。2階の自分の部屋の明かりが

   ついていて、どこかほっとした顔。

 

○同・さくらの部屋(夜)

   台所で、エプロン姿のアンディ(3

   7)がパスタを作っている。さくら、

   後ろからのぞきこみ、匂いを嗅ぐ。

さくら「アマトリチャーナだ!」

アンディ「(振り返り笑顔で)夜食にどう。

 これから勉強するでんしょ?」

さくら「もちろん。今年こそ受かりたいし」

アンディ「じゃ、500円になりまーす」

さくら「うっ、金欠なんで、もう一声!」

アンディ「フリーの僕なんかより、君の方

 が稼いでるっていうのに?」

さくら「何よ、家賃、光熱費は誰が出してる

 と思ってるのよ」

アンディ「(渋って)460円」

さくら「ケチなイタリア人なんて嫌い!」

アンディ「さくらって名前のくせに、大和撫

 子の欠片もない君に言われたくないなあ」

   × × ×

   食卓でパスタを食べるさくらを黙って

   見ているアンディ。

さくら「アンディのパスタは、本当最高!」

アンディ「あのさ、イタリアに帰ることにな

 った」

さくら「え? え、突然どうしたの?」

アンディ「実は3週間前からママが入院して

 て、妹が面倒みてくれてたんだけど、どう

 やら妹も限界みたいで。僕もママの世話し

 に一時的にね」

さくら「あ……一時的なんだ」

アンディ「でも、いつまで日本に居るか、

 悩んでたところで。ねえ、さくら」

さくら「何?」

アンディ「僕と一緒にイタリア行かない?」

さくら「は? 何で私? いきなり何!」

アンディ「僕たちはプラトニックというか、

 友人ではあったけど、僕の中で、さくら

 はもう家族というか……うん」

さくら「む、無理、無理、無理!!」

アンディ「そういう反応は予想はついてた」

   寂しげに笑って立ち上がるアンディ。

さくら「あ、ごめん、ちょっとビックリして、

 あの、でも、私は弁護士になりたいから、

 今は恋愛とか、ましてや海外に行くとかそ

 ういうのは……」

アンディ「知ってる。でも、いつまでも司法

 試験を受け続けるつもり? どうして弁護

 士にこだわるの?」

さくら「……それは……」

アンディ「肝心な事は話してくれなかった」

   アンディ、部屋を出て行く。

さくら「……ただの同居人のくせに」

   パスタを一口食べて、ため息をつく。

 

○アポール法律事務所・応接室

   さくら、新垣の隣に、正面の中村俊樹

   (24)を睨みつけている中村玲子

   (28)が座る。俊樹の隣には、スー

   ツを品良く着こなす遠山奏汰(27)。

遠山「浮気という定義で言えば、一度そうい

 う事があったからとはいえ、300万の慰

 謝料というのは法外ですよね」

新垣「玲子さんのお気持ちを考えると妥当な

 金額かと」

玲子「そうよ。びた一文負けないんだから

 ね! 大体、ヒモで6年私の拗ねかじっ

 て来て、この仕打ちって何よ!」

さくら「玲子さん、落ち着いて下さい」

俊樹「お前が俺の夢を応援するとか言って、

 部屋に住まわせたり、携帯電話家族割り

 に勝手に入れたり、そんなんで流されて籍

 入れた俺の気持ちにもなってくれよ」

玲子「はあ?! てめえ、表に出ろや!」

遠山「元ヤンの奥さんが家庭で癒しを提供で

 きなかったから旦那様は浮気したのでは」

玲子「は?」

新垣「こちらとしては、バイトでも何でもし

 ていただいて、きちんと慰謝料を支払って

 頂きたいの一点です」

さくら「……夫婦どちらにも問題はある。だ

 って、結婚って共同作業なわけですよね。

 というか、契約ですから」

遠山「あなたはどっちの立場で話しているん

 ですか」

玲子「私は何も悪くないんだから!!」

   机につっぷして泣き始める玲子。

 

○さくらの部屋(夜)

   アンディが段ボールに荷物を詰めてい

   る。さくらを撮った写真を眺める。

アンディ「懐かしいな……」

   さくらが帰宅する。

さくら「わ、かなり荷造り進んでるね」

アンディ「さくら、淋しかったら、また僕み

 たいな同居人を探したらいいよ。まあ、

 僕のような紳士はそうそういないし、女の

 子とかそういうのがいいんじゃない」

さくら「……淋しいから、一緒に住んでいい

 って言ったわけじゃないから」

アンディ「……そか。そうだよね」

   再び荷造りをし始めるアンディ。

さくら「あ、これ、段ボールの蓋、ちゃんと

 閉めないと。相変わらず雑ね」

アンディ「さくらは細かくて、慎重過ぎ。思

 い切りよく行動する方が道は開けるよ」

さくら「名言っぽい」

アンディ「でしょ」

   さくらも一緒に荷造りを手伝う。

さくら「あ、懐かしい写真あるね。出逢った

 頃の。私、まだ大学院生だったね」

アンディ「ここまで司法試験に落ちるなんて

 思いもしなかったさくらであった」

さくら「ナレーションやめろ」

アンディ「これ、全部あげる。僕が有名なカ

 メラマンになったら友達に自慢してよ」

さくら「100年待てばいい?」

アンディ「あはは。死んでる、死んでる」

   さくら、アンディから写真の束を受け

   取る。アンディ、さくらをじっと見る。

 

○さくらの部屋

   部屋がすっきり片付いている。

   アンディが静かにドアを閉める。

 

○アポール法律事務所・ミーティングルーム

   新垣、さくら、向かい合って座る。

新垣「良くも悪いニュースだ」

さくら「えっ、どうしたんですか」

新垣「中村玲子さんが離婚を取り下げると言

 ってきた。気が変わったらしい」

さくら「は? どうしてですか」

新垣「旦那の夢とか何だか話してたけど、ど

 うやら成功したみたいで、態度を豹変させ

 たってわけ。妻の座で、貢いだ6年分搾り

 取るつもりかもね」

さくら「結婚って何なんですかね……」

新垣「バツ3だから言うけど、結婚はいい」

さくら「懲りてないっすね」

   さくらの携帯電話が鳴る。

新垣「こら、仕事中だぞ」

さくら「すいません。って、え?」

   携帯電話のメッセージ。アンディから。

   『ラストチャンス。石橋を壊して、自

   分の殻を破って、こっちに来てよ。空

   港で君を待つ アンディ』

   さくらの目が揺らぐ。思わず立ち上が

   って、新垣を振り返って見るさくら。

新垣「な、何、どした?」

 

○成田空港・国際ターミナル(夕方)

   大きなキャリーケースの上に座って

   飛行機場を眺めているアンディ。

さくら「この、バカ!!!」

   アンディが振り返ると、さくらが居る。

アンディ「バカって……最後のお別れの言葉

 がそれ?」

さくら「言いたいことだけ言って、イタリア

 に帰らせないからね! た、ただの友達

 のために、こんな所まで来ないんだから」

   アンディ、さくらの近くに歩いていく。

さくら「で、でも、一緒には行けない。私

 はここで闘ってる。それに、待たない。で

 も……アンディを想ってる」

   アンディ、優しく微笑み、さくらの手

   をとる。さくらもアンディを見上げ、

   照れたように笑う。

アンディ「よく渡れました。百点。飛行機に

 乗れたら一万点あげたけどね」   

さくら「元気で!」

   さくらの目から、涙が一粒零れていく。