シナリオ☆おひとり雑技団

過去のシナリオ置き場です。無断転載はお断りしています。感想などはどんどん受付けています。

20枚シナリオ 『記者』

私の中で、記者は全般ゲスな人のイメージなのですが、

そういう意味で、福山さん主演の映画「スクープ」が気になってます。

でも直近で観たいのは「怒り」です。

感動して大好きになった「君の名は」に続いて、観たい映画ばかり、、、

 

さて、課題アップします><

 

 

「ソー・ニアリー・スクープ」

             

★人物

半田 吾郎(43)週刊誌『朝日』の記者

半田 道子(46)吾郎の妻

半田 省五(13)吾郎の息子

海山 拓(55)情報屋

佐倉 君江(42)主婦

 

○喫茶店

   薄暗い照明の下、ボックス席で、顔を

   突き合わせている男が2人。くたびれ

   たスーツ姿の半田吾郎(43)と、帽

   子を目深に被っている海山卓(55)。

   吾郎は鉛筆の先をぺろっと舌先で舐め、

吾郎「それは本当か」

海山「げへへへ」

吾郎「このネタが本物ならね。一面スクー

 プだ……まさか、主婦が……」

海山「暇つぶしで死体解体業とは、ね」

 

○アパート・半田家・トイレ~廊下(夜)

   資料を読み込んでいる吾郎。ノックの

   音に顔を上げる。

道子(声)「いつ出るの?」

吾郎「んあ?! まだ、踏ん張ってんだよ」

道子(声)「出たら換気しといて下さいね」

吾郎「(ぼそっと)……専業主婦の分際で」

   道子の足音が去っていく。

吾郎「みんな俺をバカにしやがって……」

   トイレから出て、廊下を歩く吾郎。

   息子の省吾の部屋の前で立ち止まり、

   乱暴にドアをノックする。

吾郎「おい、いつまでそこに居るんだよ!

 たった13年で人生に絶望してんなよな」

   何かがドアに投げられる音。

吾郎「……けっ」

 

○さびれた建物・外観(夜)

T『数日後』

   黒い服に身を包み、首からカメラを提

   げた吾郎、建物を見上げる。

海山の声「顧客から依頼があると、その主婦

 達は、とある場所で解体作業を行うのは分

 かってますから。げへへへ」

   × × ×

   忍び足で、建物の周りを歩く吾郎。額

   から汗が滴り落ちる。

吾郎「(ブツブツと)こんな不気味なところ、

 さっさとズラかりてぇな」

   ごつっと音がして、吾郎の視界は真っ

   暗になる。

 

○さびれた建物・どこかの部屋(夜)

   吾郎は目隠し、口にガムテープ、手足

   に縄をかけられ、床に転がっている。

吾郎N「……なんだ、この匂いは」

   吾郎の頭の近くに、血が流れていく。

   口元に血が流れ、吾郎はうっと呻く。

 

○半田家・浴室(夜)

   半田道子(46)の後ろ姿。ごしごし

   と洗っている。

道子「やっぱり腰にくるのよね~」

 

○さびれた建物・どこかの部屋(夜)

   芋虫のようにうごめく吾郎。黒いマス

   クで顔を隠した女達が集まってくる。

   その中の、佐倉君江(46)はふうと

   ため息をつく。

君江「一日に何体さばけばいいっての」

女1「あのウロチョロしてたデブはもう解

 体済んだし、さっさと終わらせよう。明

 日、子供の参観日なんだって」

女2「リーダー、これ以上バレるとまずい」

君江「こいつの正体は……っと」

   君江、吾郎の服のポケットを漁る。

吾郎N「何なんだ、こいつら。何で、こんな

 に冷静なんだ?! まずい、殺される!」

   吾郎が暴れだすので、女1が頭を蹴り

   飛ばす。

女1「男なら黙って殺されとけって」

女2「リーダー、名刺とかありました?」

   君江、名刺入れから名刺を取り出して、

   黙り込む。

君江「これは私の判断で決められないわ」

 

○半田家・廊下(朝)

   省吾の部屋の前に朝ご飯の乗ったお盆

   を置く道子。

道子「……ねえ、あんたはお父さんとお母さ

 んだったら、どっちを取る?」

   しーんと静かで、道子はふっと笑う。

道子「行ってくるわ」

 

○さびれた建物・どこかの部屋

   吾郎、じっと動かないでいる。

吾郎N「……日中は誰もいないんだな……、

 くそ。せっかく掴んだネタなのに。くそ」

   吾郎の服のポケットの携帯電話が鳴る。

吾郎N「み、道子か?! 電話に出たいが、

 これじゃ……せめて、会社側で俺の安否を

 気にしてくれて、ってそれはないか。たい

 したネタも上げてこられなかった俺に価値

 なんてねえよ」

   扉が開いて、黒いマスクをした君江が

   入ってくる。

君江「あんた、私の知り合いの旦那でね」

吾郎N「道子の知り合いってことか? じゃ、

 助けて貰えるんじゃ」

君江「ちょっと待ってね」

   君江が吾郎の口のガムテープを外す。

吾郎「た、助けて下さい。こ、公開なんてし

 ません! しがない3流記者の俺が欲張っ

 たのがいけませんでした! 道子に免じて

 見逃がしていただけないでしょうか?!」

君江「……道子さんに免じて、ね……」

吾郎「あの、嫁さんとはどういう」

君江「交渉しましょうか。あんたの大事なも

 のを差し出してもらうわ。じゃないと、あ

 んた記事にして、あれこれ書いちゃうわけ

 でしょ?」

吾郎「しません、しません」

君江「する、しないじゃなくて、誰か差し出

 してって言ってるの。分かる?」

吾郎「言っている意味がイマイチ」

君江「そうね。道子さんか省吾くん、どっち

 かの命を預からせてもらおうかな」

吾郎「そ、そんな。本当に記事には……」

道江「道子さんに免じて、今日は帰らせてあ

 げる。でも、私達はあなたのすぐ傍で見て

 る。分かった?」

吾郎「わ、分かりました!!」

 

○編集社・オフィス

   デスクの前に座って、新聞をチェック

   している初老の男の前に、よれよれの

   吾郎がかけよる。初老の男は睨んで、

男「半田、お前、休んでどこほっつき歩いて

 た! 減給されてえのか」

吾郎「まさか。すっげえネタが!!」

   吾郎は靴を脱いで、そこから小型のI

   Cレコーダーを取り出す。

吾郎「これ、これが証拠です」

男「な、何だってんだ」

   吾郎、にやっとする。

吾郎N「主婦は甘いな。ドンくさいおばちゃ

 ん達なんだろ、どうせ」

   男はすぐにICレコーダーをパソコン

   に繋げて確認する。

男「ん? 何もデータがないぞ」

吾郎「そ、そんなわけは」

男「お前ついに頭もいかれたのか」

   男はICレコーダーを床に投げ捨てる。

吾郎N「嘘、だろ?」

 

○編集社・外

   吾郎がよたよたと出てくる。

   道子が申し訳なさそうに近寄っていく。

吾郎「……お前、何でここに。それより、お

 前に聞きてぇことがあるんだよ」

道子「約束は守るものって習わなかった?」

吾郎「は?」

   吾郎の背後に、君江が立っている。

君江「クズは解体」

   君江、にやっと笑う。

   吾郎の背中に当てられるスタンガン。

 

○さびれた建物・どこかの部屋

   床の上で手足を縛られた吾郎、顔を上

   げる。視界に、椅子に拘束された、半

   田省吾(15)が映る。省吾の顔は涙

   で濡れている。

吾郎「な、何で、お前……」

   君江、道子はマスクをせずに立ってい

   る。道子、悲しげに笑う。

道子「本当に父親って無責任な生き物よね」

君江「私たち、別に解体なんてしたくないの

 よ。でもね、この世の中には居なくなった

 ほうが良い人間ばかりだから、必要だから。

 こんな嫌な仕事、ないわよね」

省吾「……親父、俺、まだ死にたくない」

吾郎「ど、どうするってんだよ。なんで、道

 子は繋がれてないんだよ。俺と省吾だけが、

 何で……」

君江「だって、みっちゃんは大事な仕事仲間

 だもの」

   君江、部屋の隅に置いてある工具を取

   り出す。大きなのこぎりを出して吾郎

   に見せる。

吾郎「う、嘘だよな」

   道子、にこっと笑う。

道子「マグロも人間もさばく要領は同じよ」

君江「家族を殺して生き延びるか、父親らし

 く本物の父親になって死ぬか……」

吾郎「お、お前ら、自分たちが何してるか分

 かってんのか?!」

省吾「お、お母さん、やめて、お願い!」

道子「省吾。ちゃんと見ていないとダメ。こ

 んな大人になっちゃだめだって、お母さん

 がちゃんと教えてあげるから」

   君江が道子にのこぎりを差し出す。

吾郎「お、俺が悪かった! 欲に目が眩んだ。  

 ビッグスクープをお前達に自慢したかった。 

 本当に、それだけだから!!」

   道子、首をかしげる。

道子「妻の変化に気づけないあなたには、一

 生スクープなんて無理よ」

   吾郎の目、大きく見開かれる。