シナリオ☆おひとり雑技団

過去のシナリオ置き場です。無断転載はお断りしています。感想などはどんどん受付けています。

20枚シナリオ『ススキ』

『隠れ鬼』

 

☆人物

大原 一華(9)(29)女優

大原 ふみ(50)一華の母

大原 良行(53)一華の父

櫻田 亮人(31)一華の夫

 

○結婚式場・控室

   純白のドレスを着た大原一華(29)が鏡の中の自分を見つめている。その後ろ

   でウロウロしている、白のタキシード姿の櫻田亮人(31)。

一華「あなたのそんなところ初めて見た」

亮人「心臓が口から出るっては、こういう時に使うんだろうな」

   ノックの音がして、式場のスタッフが顔を覗かせる。

スタッフ「大原様…これをお届けしたいと女性の方が…」

亮人「…ススキ?」

   ススキの花束を持っている亮人を振り返って見る一華。

一華「…あの、それを届けた方は」

スタッフ「もう帰られましたけど」

   一華、ドレスを引きずったまま、部屋の外に出ようとするが、亮人が引き留め

   る。

亮人「もう式が始まるよ」

一華「…お母さんかもしれない…ススキを届けた人…」

   一華、亮人を振り切り、部屋の外に出る。

 

○(回想)草原(夕方)

   一華(9)が手で自分の顔を覆い、木に向かって、数を数えている。

   草原には、大人ほどの背丈のあるススキが連なって生えている。

一華「6、7、8、9、10」

   一華は手を顔から離して振り返る。

   一華は辺りを見渡して、ススキの中を両手でかき分けながら進んでいく。

一華「鬼さん、どちらー」

   かき分けても、かき分けてもススキ、一華の顔は不安で曇っていく。

一華「鬼さん…お母さん?お母さん」

   ススキの大群から抜け出した一華、草原をきょろきょろと見渡す。

一華「…お母さん?」

   夕暮れの空にほっそりとした月が浮かんでいる。

 

○結婚式場・廊下

   辺りをきょろきょろ見渡している一華。亮人とプランナーがやってきて

   一華に話しかける。

プランナー「私たちもお探ししたのですが…会場には、いらっしゃらないようです」

一華「…そうですか…」

   一華、溜息をつく。

 

○結婚式場・チャペル・外・扉の前

   一華、大原良行(53)が扉の正面に並んで立っている。

一華「…お父さん」

良行「なんだ」

一華「お母さんが…会いに来た」

良行「え?」

一華「…ススキが控室に届けられたの…子供の頃よく遊んでた草原にたくさん咲い

ていたススキ…お父さんも覚えているでしょ」

良行「…もう昔のことは忘れた」

一華「…私、お母さんに見つけて欲しくて気づいて貰いたくて、女優になったのよ。…どうしてお母さんが家を出て行ったのか…真実が知りたかったから」

良行「…真実か…」

   プランナーが近づいてくる。

プランナー「そろそろ入場のお時間です」

   

○結婚式場・外

   橋本ふみ(50)、チャペルの鐘の音に耳を澄ませている。

 

○結婚式場・披露宴会場

   テーブルを回って、招待客と記念撮影をしている一華と亮人。

   親戚席に良行がいないことに気が付き、一華はきょろきょろする。

亮人「お義父さん、トイレかな」

一華「ビール飲みすぎて吐いてたりして」

亮人「ちょっと見てくるよ」

 

○結婚式場・廊下

   廊下の端で良行が携帯電話を持って、電話をしている。

良行「どういうつもりだ!こんな祝いの席に…縁起でもない」

   歩いてきた亮人、良行に気が付くが、声を掛けづらくなり、良行の電話を陰でこ

   っそり聞いている。

良行「…お前が自分から家を出て行ったんだろ…男が出来たので出ていきました、ごめんなさい、とでも言うのか…あいつがどんな思いで今まで生きてきたか。…とにかく、…今後は一華に手紙も送ってきたりするな…分かったなら早く帰れ…」

   良行は携帯電話を切ると、深い溜息をつく。

亮人「お義父さん」

   良行はびくっとして亮人を見る。

良行「…聞いていたのか」

亮人「…電話の相手、一華のお母さんですか?そうなんですよね?さっき、ススキを控室に届けに来た人がいたんです」

良行「…俺は男手ひとつで一華を育ててきた…一華も母親に会いたい心ひとつで女優になって…。20年前のことを今、知ったところでどうなるっていうんだ…知らない方がいいこともあるだろう」

亮人「…一華は母親が出て行ったことで自分を責め続けてきました…彼女はもう子供じゃない。知る権利があります」

良行「…勝手にしろ」

   亮人は良行にぺこりと礼をすると、廊下から通じる階段を走って降りていく。良

   行は亮人の後ろ姿を黙って見ている。

 

○結婚式場・外

   生け垣に座って遠くを見ているふみ、亮人が後ろから声をかける。

亮人「あの…一華のお母さんですか」

   ふみ、振り返り、亮人の姿を見て、目を見張る。

ふみ「…あの…」

亮人「…お義父さんには反対されたんですけど…一華に会ってやって下さい」

ふみ「…あの子に会う資格なんてないのは分かっているのよ…でもあの子の晴れ姿を一目見たくて…」

亮人「人見知りの一華が女優になったのは…あなたに会うためでした。一華の20年間はあなたに捧げたようなものだったんです…これからの人生は一華のためだけのものにしてやりたいんです」

   ふみ、手で顔を覆い、嗚咽を堪えながら涙を流す。

 

○結婚式場・外・中庭(夕方)

   私服姿の亮人が歩いてくる、後から一華がついてくる。

亮人「…あれ…」

一華「亮人、ねえ、お母さんはどこ」

亮人「…5時にここでって…」

   一華、ベンチの上に置かれた手紙に気が付き、手に取る。

亮人「ちょっと探してくる」

   亮人、中庭を飛び出して、外に出る。

   一華、ベンチに腰かけ、手紙を開ける。

ふみの声「一華へ…あなたの顔を見て、ちゃんと謝らないといけないと分かって

いたけれど、勇気が出ませんでした。私が家を出たのはあなたのせいでも、お父さん

のせいでもありません。私の我儘にずっと付きあわせてしまいましたね、ごめんなさ

い。優しい彼と幸せにね』」

   一華は手紙を顔に押し当てて涙を流す。

一華「お母さん…なんで…」

   

○草原

   背の高いススキが風に揺られている。

   一華と亮人が手を繋いで歩いている。

亮人「そっか…お義父さんがね…」

一華「20年分の手紙…まだ読み切れていないけど…私から返事がなくても書き続

けてくれていたことが…嬉しかった…ねえ、お母さん、どんな風だった?」

亮人「何度めだよ…綺麗な人だった。一華も何十年かしたら、あんなおばさんになるんだな」

一華「おばさんってひどい…」

   一華、ススキの方へ歩いていく。

亮人「冗談だよ、怒らないでよ」

   一華、ススキの大群にどんどん突き進んでいく。

一華「…隠れ鬼…子供の頃はうまく隠れられたのにな…」

   亮人、一華の腕を掴み、引き留める。

亮人「もう大人なんだから。行こうか」

一華「…うん」

   亮人、一華と手を繋いで歩き出す。

亮人「おばさん、おじさんになっても、ずっと一緒にいような」

一華「え?なんて?」

亮人「聞こえただろ」

   一華、振り返ってススキの方を見る。

   強い風が吹いてススキが大きく揺れ、その間に、ふみが泣いたように笑っている

   姿が一瞬見える。

   一華は小さく微笑むと、前を向いて、亮人とともに、夕日に向かって歩いてい

   く。

20枚シナリオ『窓』

『ママ未満』

 

☆人物

秋田 風太(42)不妊治療中の夫

秋田 加奈子(38)秋田の妻

二宮 悟(29)B棟の住人

二宮 祐子(24)二宮の妻

二宮 レイ(1)二宮の息子

田所 有馬(47)不妊治療クリニックの医師

 

公営住宅A棟~前の歩道(朝)

   スーツ姿の秋田風太(42)がゴミ袋を持って、階段を下りてくる。

   引っ越し用トラックが停まっている。

   B棟から二宮悟(29)が出てきて、引っ越し業者の男と言い争っている。

   秋田はちらっと二宮を見て、そのまま

   会社へと向かう。

   

公営住宅A棟・秋田の自宅・リビング

   秋田加奈子(38)がテーブルの上の婦人体温計を睨んでいる。

   加奈子、深い溜息をつく。

   子供の泣き声が聴こえ、加奈子は顔をあげる。そして、立ち上がり、窓のカーテ

   ンをめくり、外を見る。

   向いのB棟、3階の部屋、ベランダで

   泣いている二宮レイ(1)と、大きい声で叱りつけている二宮祐子(24)。

   レイは大きな目に涙を浮かべている。

   加奈子は、カーテンをさっと閉める。

加奈子「…あんなに叱らなくてもいいのに…」

 

不妊治療専門クリニック・診療室

   白衣の田所有馬(47)の話に耳を傾けている秋田と加奈子。

田所「AMH検査の結果、卵巣機能が実年齢よりもちょっとアレなんですよね…」

  加奈子、沈んだ顔で俯く。

秋田「…あの…治療できるとしたら、どんなことがあるんでしょうか」

田所「妊娠しないわけじゃないんです…ただ、自然妊娠の可能性は低いですね」

   田所はパンフレットを秋田に手渡す。

秋田「…高度治療ですか」

加奈子「…体外受精だと…結構しますよね…」

田所「…一回40万程度を見てもらえれば」

加奈子「…40万…」

秋田「…可能性があれば賭けてみたいよな…な、加奈子」

   加奈子、パンフレットに目を落としたまま、返事をしない。

田所「…トライするなら早めがいいですよ」

   秋田、力強く頷く。

 

公営住宅A棟・秋田の自宅・寝室(夜)

   秋田、加奈子、ベッドの上で並んで座っている。

秋田「俺…やる気出てきた…とにかく精のつくもん食べて、元気な精子を出してみせる」

加奈子「…うん…」

秋田「どうしたんだよ」

加奈子「…もう5年だよ…あと何年続くんだろう」

秋田「…納得するまで続ければいいさ…お金なら俺が稼ぐよ、馬車馬のように」

   子供の泣き声が聞こえる、加奈子、立ち上がり、窓のカーテンを開けて、外を見

   る。

秋田「…うるさいよな…たぶん最近引っ越してきた若い連中だろう」

加奈子「…あの人、いつも苦しそう」

秋田「…え?知り合いになったの?」

加奈子「ううん…でも、よく子供が泣いてるから…ママになれたのに、あんな嫌そうな顔ばかりして…私ならあんな顔しないのに…世の中不公平だよ」

   加奈子はぴしゃっとカーテンを閉める。

秋田「…体外受精に賭けよう」

   加奈子は秋田の方を見て、頷く。

   秋田はベッドに戻ってきた加奈子をぎゅっと抱きしめる。

 

公営住宅A棟~前の歩道(朝)

   秋田がスーツ姿で出てくる。

   二宮がふらふらとB棟のほうに歩いていくのを見かける秋田。

秋田「…朝帰りかよ」

   秋田、二宮の後ろ姿を睨みつけるが、腕時計を見て、急いで歩いていく。

 

公営住宅内の公園

   加奈子、ベンチに座ってぼーっとしている。

   祐子がレイをベビーカーに乗せて公園にやってくる。

   加奈子は立ち上がり、去ろうとする。

   祐子、加奈子に声をかける。

祐子「あの、いつもすいません」

   加奈子、びっくりして振り返る。

祐子「…A棟の方ですよね…あの、子供がいつも泣いて…うるさくてすいません」

  祐子、加奈子に頭を下げる。

加奈子「い、いえ…そんな…」

祐子「公営住宅はファミリー向けって聞いてたんですけど…もっと子供が多いかと思ってたらそうでもないですね…」

   レイは指を咥え、祐子を見上げている。

   祐子はレイの手をぴしゃっと叩く。

加奈子「…子育てって大変ですか?」

祐子「…旦那が何もしてくれなくて…実家にも帰れないし…人様に迷惑かけちゃいけな

い…そればかり考えてます…」

   レイ、加奈子のほうに手を伸ばす。

レイ「ちゃ、ちゃ」

   加奈子、恐る恐るレイのほうに手を伸ばす。レイは加奈子の指を掴んで離さな

   い。

祐子「こら、レイ」

加奈子「いいんです…指…可愛いですね」

   祐子、ほっとしたように笑う。

   加奈子、レイに指を握られたまま立っている。

 

不妊治療専門クリニック・診療室

   笑顔の田所。秋田と加奈子は涙を流している。

 

公営住宅A棟・秋田の自宅・リビング

   ソファに座って編み物をしている加奈子。秋田はソファで寝ている。

   子供の泣き声を耳にして、立ち上がる加奈子、窓のカーテンをめくり、B棟のほ

   うを見る。

加奈子「あなた、ちょっと来て!」

   風太、慌てて窓のほうに行く。

   B棟の二宮の家のベランダに、祐子とレイ。祐子は窓をどんどん叩いている。レ

   イは泣きじゃくっている。

秋田「こんな真冬に外に締め出したのか?!」

加奈子「祐子ちゃんのお部屋303だから、お願い、あなた行ってきて!私、警察呼ぶ

から」

秋田「分かった!」

   秋田、慌ててリビングを出ていく。

   加奈子、窓を開けて、大きな声を出す。

加奈子「祐子ちゃん!今、警察呼ぶから!!」

   祐子、加奈子に気が付き、目に涙を浮かべて、レイを強く抱きしめている。

   加奈子、部屋に戻り、電話をかけようとする。

   急にお腹を抱えてうずくまる加奈子。

   はっとして、お腹を見つめるが、腹痛に顔を歪めながらも警察に電話する。

加奈子「すいません、知り合いが夫に暴力を受けているようで…至急来てください…」

  背中を丸めて、警察との電話を続ける加奈子の後ろ姿。

 

公営住宅B棟・二宮の自宅・玄関・外

   二宮がドアを半開きにして、目の前の秋田を睨みつけている。

二宮「だから、お前には関係ねえって言ってるだろ?」

秋田「祐子さんは妻の友人だ!早く、祐子さんと息子を家の中に入れてやれ」

二宮「しつけだよ!嫁と子供をどうしようが俺の勝手だろうが」

   秋田、二宮の頬めがけてパンチを食らわせる。二宮、後ろに倒れ込む。秋田、拳

   をさすりながら、急いで中に入る。

 

公営住宅A棟・秋田の自宅・リビング

   うつ伏せになってぐったりしている加奈子。

   ドアを開けた秋田、びっくりして駈け寄る。

秋田「加奈子!!」

   加奈子の目から涙が零れ落ちる。

 

○ペットショップ 

   子犬がケージ越しにじゃれていて、その前で微笑んでいる加奈子。

   秋田はその後ろで加奈子を見ている。

秋田「…なあ、本当にいいのか」

加奈子「…私、決めてたんだ…40歳になったら…切り良くやめようって」

秋田「…一回うまくいったんだから…また、頑張ればいいじゃないか」

   加奈子は振り返って笑う。

加奈子「…あなたがいてくれるから…私はそれだけで幸せ。…子供がいない人生を…ちゃんと考えていこうと思う…」

秋田「俺は加奈子が幸せなら…それだけでいい。何も要らないよ…」

   加奈子、子犬を再び見つめる。

加奈子「…あの時ね…私、一瞬ママの気分だったの…誰かを守りたい、そんな強い気持ちを持てた…お腹の子が勇気をくれたんだと思う…私、ママだったよ」

秋田「うん、そうだね…」

加奈子「ねえ、この子、さっきから私のことずっと見てる」

   秋田は加奈子の隣に並んで立つ。

加奈子「…うちの子になりたいのかな?」

   子犬は嬉しそうに尻尾を振っている。

秋田「…加奈子、こいつにべったりになって、俺のことどうでもよくなったりしない?」

加奈子「やきもち焼くの早いよ、パパ」

   加奈子の笑顔につられ、秋田も笑顔になる。

   秋田と加奈子、子犬を見つめている。

 

20枚シナリオ『親子』

『そして母になる』

 

☆人物

沖田 守(9)(14)つっぱり中学生

沖田 吾郎(37)(42)守の父

綾島 祐子(40)守の叔母

水野 咲(14)守の幼馴染

竹下 凌平(14)守の友人

沖田 史子(45)守の母(遺影)

 

○守の通っている中学校・屋上

   屋上の隅に座り、弁当の箱を開けて中を見ている学ラン姿、リーゼント姿の沖

   田守(14)。

   屋上の扉が開き、髪の毛をポニーテールにしたセーラー服姿の水野咲(14)

   が守を見て、駈け寄ってくる。

咲「まもちゃーん」

   守、弁当箱の蓋を慌てて閉じる。

守「…こんなとこまで付いてくんなよ」

咲「まもちゃん、最近ずっと屋上にいるよね」

守「…青い空が見てぇんだよ」

   咲は守の隣に座る。

咲「もう1年か…早いね…まもちゃんのお母さんが亡くなってから…ね、思わない?」

守「人んちの事情に口はさむなよな」

咲「隣の家同士なんだし、いいじゃん」

守「…こっちは母さんのおかげで、大変なことになってんだから」

咲「え?」

   守、弁当箱をちらっと開けて中を見る。

   「まもるLOVE」と海苔で書かれた海苔弁当の中には、から揚げや卵焼き、

   野菜炒めなどがぎっしり入っている。

 

○守の自宅・台所~リビング(夕方)

   腰を振り、ポップスを歌いながら料理をする沖田吾郎(42)、白いレースの

   ついたエプロンを腰にまいている。

吾郎「『夢じゃない、あれもこれも。その手でドアを開けましょう~祝福が欲しいのなら』」

   リビングのドアを開けて、守が入ってくる。

吾郎「『悲しみを知り、独りで泣きましょう、 そして、輝く、ウルトラソウル!』」

   おたまを振り上げ、ポージングする吾郎、自分を睨んでいる守に気が付き、笑

   顔になる。

吾郎「お帰りなさーい」

   守、鞄から弁当箱を取り出し、黙ってキッチンカウンターの上に置く。

吾郎「美味しかったぁ?」

守「…弁当にLOVEとか要らないから」

吾郎「ほんの気持ち、ほんの」

守「何なんだよ!!ほんと気持ち悪いから!俺認めてないから!」

吾郎「何が」

守「だから!そういうの、全部!!!」

   吾郎、ふうと溜息をつき、腰に手をあてながら、吾郎を見る。

吾郎「お母さんの遺言書、守にも見せたでしょ?これからはお父さんがお母さんになるの。…というか、実はWお母さんだったんだけどねえ」

   守、頭を掻きむしる。

守「…父親が急におかまになって、私がお母さんとか…訳分かんねえだろ?!」

吾郎「黙っていたのは悪かった。でも、お母さん、あ、死んだほうのお母さんが、どうしても言いたくないって…『私が死んだ後は勝手にしていい』って遺言書にもあったでしょ…だから、落ち着いたら、守に本当の私を知ってもらおうと思って…」

   守、きっと吾郎を睨む。

守「思春期の繊細なハートに、あり得ないんだよ!くそじじい!」

   守、リビングのドアを乱暴に開けて出ていく。

   吾郎、髭の剃り残しのある顎にそっと手をやり、溜息。

吾郎「不良ぶって背伸びしているけど…まだまだ子供よね、史子さん」

   チェストの上に置いてある沖田史子(45)の写真を見て、吾郎は悲しげに笑

   う。

 

○河川敷・土手(夕方)

   河川敷にいる小学生の子供とその親、楽しそうにキャッチボールをしている。

   土手に座って親子を眺めている守。

守「…昔は…親父だって…くそ」

   守、持っているバットで素振りを始める。

 

○(回想)河川敷

   守(9)が吾郎(37)に向かってボールを投げている。

   吾郎、ボールを取り損ない、へなへなと走っていく。

守「父さん、ちゃんと受け取ってよ!」

   内股で走りながらボールを追いかけている吾郎の後ろ姿を見ている守。

守「…何であんな走り方なんだろ、かっこ悪」

   吾郎、ボールをようやく掴むと、守に向かって手を振る。

吾郎「いくよー」

 

○元の河川敷・土手(夕方)

   手からバットからぶら下げて、ぼーっと立っている守。

守「そういえば…昔から変だったな…」

   学ラン姿、金髪の竹下凌平(14)が、自転車に乗りながら、守に声をかけ

   る。

凌平「うぃーっす。お、バットで殴りこみ?」

守「…まあな」

   凌平は自転車を道に停める。

守「お前、自転車買ったん?」

凌平「なわけねーじゃん、ぱくったんだよ」

守「ふ、不良なら、ぱくらねぇとな」

凌平「そうそう。片親の俺らって大変だよな…親は、金も余裕もなくて、俺たちに八つ当たりするし」

守「…ああ」

凌平「はあ…また男を連れこんでんだろうな…帰りたくねえ…お前んちにでも行くかな」

守「はへ?!」

凌平「お前の親父、帰るの遅かったよな。一緒にレトルトカレーでも食べようぜ」

守「いや、いや、いや」

   周りを見渡しながら走ってくる吾郎の姿が守の視界に入る。通行人が吾郎をぎ

   ょっとして見ている。

   凌平、吾郎を見て、呟く。

凌平「うわ、おかまじゃん。きも」

   凌平と一緒にいる守を見て、笑いかけようとして、やめる吾郎。

   守、凌平の隣を通り過ぎ、吾郎が来た方角じゃない方へ歩き出す。

凌平「おい、守!!どこいくんだよ」

   凌平、立ち尽くす吾郎を見て、首をかしげる。

凌平「…どっかで見たことあるような…」

 

○守の自宅・リビング(夜)

   スーツ姿の綾島祐子(40)が、かしこまってリビングのテーブルに座ってい

   る。所在なく立っている吾郎。

祐子「…恥知らずというか…なんていうか」

吾郎「…黙っていたことは謝ります…でも」

祐子「守が非行に走ったは吾郎さんのせいね。守も可哀想に…あなたがオカマだから…しかも、史姉が死んだ後に急変したりして」

吾郎「それは…史子さんが、私が死んだ後は、あなたが守のお母さんになってあげてって」

祐子「例えでしょ、例え!…落ち着いたら再婚するとか、そういうことを史姉は言っていたのよ、きっと」

吾郎「…再婚だなんて…あり得ません」

   リビングに入ってくる守。

守「…うるさいんだけど…」

祐子「守…史姉がいない寂しさから、守が道を外して…、おばさん、すごく悲しい」

守「…別に」

祐子「こんな父親、嫌よね、おばさんと一緒に暮らしましょう…ね、養子になりなさい」

吾郎「…守は私の息子です!そんな無茶な」

祐子「あなたには聞いていないわよ!」

   祐子、カウンターキッチンの上の弁当箱を見つけ、立ち上がり、中身をあけ

   る。祐子は中身を吾郎に見せる。

祐子「…あなたが作ったお弁当なんて食べたくないのよ。ほら、残しているじゃない」

吾郎「…それは…」

祐子「あなたには親でいる資格なんてない!普通じゃないもの」

   守、祐子から弁当箱を取り上げる。

祐子「どうしたの、守」

守「…ばばあは黙ってろ」

祐子「な…」

吾郎「守、祐子おばさんに謝れ!」

   守、弁当箱を開けて、箸を持って、中身をどんどん口に入れていく。

吾郎「…守」

   祐子、守が食べるのを黙って見ている。

吾郎「…いいのよ…お前が残しているのは… 母さんのと比べたら全然美味しくないからなんでしょ?」

   守、吾郎を見ずに呟く。

守「…男親が作る弁当なんて…恥ずかしいって…たまにLOVEとかデコられてるし……まずくは、ない」

   吾郎、目に涙をためている。

祐子「…また、出直すわ」

   祐子はリビングから出ていく。

   吾郎、守の側まで歩いてくる。

   守、吾郎の顔を見る。

吾郎「…おかまで、ごめんね…でも、お母さんになりたいの…守の、最高のお母さんに」

守「…外で声かけんなよ」

   守、口の周りを袖でこすり、弁当箱を机に置き、ドアから出て行こうとする。

吾郎「…分かったわ」

   守、振り返って、吾郎を見る。

守「…ちゃんと、母、やれてるよ」

   守、顔を赤くして、乱暴にドアを閉める。

   吾郎、静かに涙を流しながら、弁当箱を手に取り、胸で抱きしめる。

吾郎「…母さん、頑張るからね」

20枚シナリオ『憎しみ』

『ママ友です、こんにちは』

 

☆人物
小暮 カンナ(35)専業主婦
加藤 芙美(36)専業主婦
小暮 竜次(29)カンナの夫
加藤 繁明(40)芙美の夫
小暮 リサ(3)カンナの娘
加藤 蒼穹(3)芙美の息子 


○公園
   数組の親子が各々砂場や滑り台で遊んでいる。
   砂場で砂遊びをしている小暮リサ(3)と、それを見守る小暮カンナ(3

   5)。
   そこに、加藤芙美(36)と加藤蒼穹(3)がやってくる。
   リサの元に蒼穹が駈け寄り、一緒に砂遊びをし始める。
芙美「…3歳くらいですか?」
   カンナ、隣に座った芙美のほうを見て、
カンナ「はい…そちらも?」
芙美「ええ…もう、言うこと聞かないんですよ…本当手がかかっちゃって」
カンナ「プチ反抗期…ですよね」

○小暮家・リビング
   リサと蒼穹が積み木で遊んでいる。
   ダイニングテーブルに向かい合って座っているカンナと芙美。
カンナ「男の子ってもっと乱暴なイメージがあったけど、蒼穹君は、かしこいね」
芙美「男の子なんだし、もっと元気よく走りまわってくれてもいいんだけど」
カンナ「加藤さんに似て、目元とか可愛いよね」
芙美「…え?そう?」
   リサと蒼穹、ぬいぐるみを引っ張り合い始める。
カンナ「リサ、貸してあげなさい」
リサ「リサのー、やーだー」
芙美「蒼穹!」
   芙美、蒼穹を抱きかかえ、蒼穹の尻を、平手でぴしっと叩く。
   カンナ、その様子を嫌そうに見ている。
カンナN「…何も…叩かなくても…」
 
○同・寝室(夜)
   布団の上でリサが眠っている。
   襖の隙間から、光が漏れている。
○同・リビング(夜)
   夕飯を食べている小暮竜次(29)と、コップにビールを注いでいるカンナ。
竜次「大丈夫?あんまり知らないママ友を家に入れたりして」
カンナ「何度も公園で会っているし大丈夫でしょ」
竜次「そっか。まあ、気をつけろよ」
カンナ「リサと同じ年の子がいて、蒼穹君って言うの。リサの良い遊び相手だよ」
   竜次の箸がとまる。
カンナ「(首をかしげながら」どうかした?」
竜次「…いや…そのママ友って…」
カンナ「そうそう。今晩どうかな?…排卵日が近くて」
竜次「…ああ…そうだっけ」
   竜次、席を立つ。
カンナ「どうしたの?」
竜次「…トイレ」
   竜次、リビングから出ていく。
   カンナ、小さい溜息をつき、机の上のスマホを手に取る。

   芙美からのメッセージが来ている。
   『今度、土曜日空いていたら、うちに来て、BBQしない?』
   カンナの返信。
   『いいね。旦那に聞いてみる』
   
○加藤家・庭
   BBQセットを囲む芙美とカンナ、竜次、加藤繁明(40)。
   リサと蒼穹は庭の隅っこで、三輪車に乗って遊んでいる。
竜次「素敵な御宅にご招待いただき光栄です。昼から肉にビールって…最高ですね」
カンナ「調子に乗って飲み過ぎないでよ」
加藤「いいんですよ。竜次さん、どんどん飲んでください。(芙美に)おい」
   芙美、竜次に缶ビールを手渡す。
竜次「…あ、ありがとうございます」
   芙美、カンナを見て、
芙美「カンナちゃんも、もっと食べて。あ、お肉追加しましょう。持ってくるわ」
カンナ「あ、私も手伝う」
芙美「いいの、いいの。ゆっくり食べてて」
竜次「あ…すいません、トイレってどちらですか?」
芙美「じゃあ、ご案内しますねー」
   芙美、竜次、家の中に。
加藤「リサちゃん、可愛いですね。私、娘が欲しくて仕方なかったので…普通は息子を喜ぶべきなんですけどね、跡取りにもなってくれるし」
カンナ「きっと立派なお医者さまになりますよ。蒼穹君、お行儀もいいですから」
加藤「…毎日仕事に忙しくて…芙美には二人目をせっつかれますが、なかなかね」
カンナ「二人目のタイミングって難しいですよね。うちは逆に男の子が欲しいって言われます。なかなか出来ないですけど」
加藤「男は単に種を植え付けるだけだから。気楽な生き物ですよね…ははは」
カンナ「それ、うちの人に言って下さいよ」

○加藤家・台所
   芙美、まな板の上の高級肉を木の棒で強く叩きつけている。
   目に鋭い光が宿っている。

○加藤家・庭
   竜次が戻って来る。
竜次「いやー失礼しました」
カンナ「今、あなたの話をしていたのよ」
竜次「え、こいつ何か変なことは?(カンナに)恥ずかしいこと言ってないよな?」
カンナ「こんな立派なおうちで、そんなことしないわよ」
加藤「…立派なんかじゃ、ありませんよ」
   加藤、悲しげに笑って、家の中へ。
   カンナ、首をかしげる。
カンナ「…私、変なこと言った?」
竜次「(憂鬱そうに)…いや…」

○バー(深夜)
   窓から一面の夜景が見える。
   肩の出たセクシーなワンピースを着て、カウンター席に座っている芙美。
近寄ってくる足音に気が付き、振り向いて、妖艶に笑う芙美。
芙美「…パパ、お疲れ様」

○公園
   リサが一人、滑り台をしている。
   ベンチに座りスマホを見ているカンナ。
カンナ「…約束、間違えたかなあ」
   芙美が蒼穹と手を繋いで、お腹を手で撫でながら、公園に現れる。
芙美「ごめんね、遅くなって」
   カンナ、芙美のお腹を見て、はっとする。
カンナ「…え?」

○小暮家・リビング(夜)
   缶チューハイを飲んでいる竜次。
   台所で洗い物をしているカンナ。
カンナ「芙美ちゃん、二人目だって。…なかなか出来ないって言ってたのに、裏切
られた気分」
竜次「…何か言ってた?」
カンナ「え?ううん。悪阻がひどくて、なかなか外に出られないって言ってたけど」 
竜次「…カンナ、ごめん!」
   竜次、床に土下座をする。
カンナ「…は?何やってんの?」

○喫茶店
   カンナ、下を向いて座っている。
   芙美がやってくる。
カンナ「ごめんね、体調はどう?」
芙美「だいぶ落ち着いたよ…」
カンナ「…せっかくの休日なのに、繁明さん、怒ってない?」
芙美「そんなので怒る人じゃないから」
カンナ「…じゃあ、夫じゃない男の子供を産もうとしてるって言ったら…?」
   カンナ、芙美を睨みつける。
   芙美、肩を振るわせ、笑い出す。
芙美「…いやだ、あの人、お喋りね」
カンナ「…浮気はできても、墓場まで持っていけないのよ…精神的に参ってる」
芙美「…だって、彼、私と別れるって言う
んだもん。安全日だって話して、中出しさせたら一発で妊娠しちゃった」
カンナ「…絶対許さない、繁明さんにバラしてやるから…家庭崩壊するがいいわ」
芙美「…そんなの、昔からよ」
   芙美、立ち上がり、カンナを見る。
芙美「私たち仮面夫婦だから…それに、蒼穹も私の子なんかじゃないし…昔の愛人の子よ…絶対産んでやるわ」
   立ち去ろうとする芙美に、掴みかかるカンナ、よろけた芙美の上に馬乗りにな

   る芙美。
芙美「…どけてよ!」
カンナ「(はっとして)…何を詰めてるのよ…こんな…」
   芙美、カンナを押しのけて、立ち上がる。
芙美「何で別れないのよ!バカじゃないの?別れなさいよ」
カンナ「…謝り通すから…愛しているから…許したのよ」
   芙美は下唇を噛みしめる。
   そして、上着から、腹に詰めていたクッションを取り出して、カンナに投げつ

   ける。
芙美「ふざけんな!!」
カンナ「(冷たく)…遊びは、遊びなのよ」
   芙美、床に崩れ落ちてもなお、カンナを強く睨み返す。

20枚シナリオ『悲しみ』

『愚か者のプリン』

 


☆人物
渡部 淳史(25)サラリーマン
福島 寛子(25)渡部の彼女
阪口 周平(26)渡部の同僚
石原 昌子(43)居酒屋『こころ』の店主

 

 

○新橋・居酒屋(夜)
   ガヤガヤ賑わっている店内、中年のサラリーマン達がくだを巻いている。
   カウンター席に座っている、スーツ姿の渡部淳史(25)は、生ビールを一気

   飲みしていている。
   その隣、同じくスーツ姿の阪口周平(26)は焼酎のお湯割りをちみちみと飲

   みながら、スマホをいじっている。
渡部「(つまらなさそうに)…みかちゃん?」
阪口「何時に帰ってくるのって」
渡部「…お前、マメよな…やっぱり無理だな」
阪口「(渡部の顔をじっと見て)…何かあった?微妙にテンションが」
   渡部、通りすがった店員に「生ジョッキで」と告げる。
渡部「…独身復帰祝いに飲みたいだけだよ」
阪口「え、寛子ちゃんと?!どうしてだよ…だって、お前ら高校生からずっと付き
合ってきて、このまま結婚するんじゃなかったのか?」
渡部「そんな古い約束…もう無効だろ」
阪口「…二人が納得して別れたんならいいけどさ…」
渡部「…今頃、荷物まとめてるんじゃないかな…博多に戻るって言ってたし」
   店員が運んできたジョッキに口をつける渡部。
   阪口は渡部を心配そうに見る。

○渡部の部屋・玄関~居間(深夜)
渡部「ただいまー」
   しーんとした真っ暗な部屋。
   渡部は口をつぐみ、けだるそうに廊下の電気をつける。
   小さな机の上に手紙が置いてある。
   渡部は手紙を手に取るが、読まずに、近くにある棚の上に、他の郵便物と一緒

   に置いてしまう。
   渡部は台所に行き、冷蔵庫を開けて、缶ビールを取り出す。
   冷蔵庫の中に一つだけ残されているミルクプリン。
   渡部はミルクプリンを手に取り、しばし眺めるが、そのまま冷蔵庫に仕舞う。
   冷蔵庫の扉が閉められ、中が真っ暗になる。

○高速バス・車内(真夜中)
   首の下まで毛布をかけ、マスクをかけた福島寛子(25)が座席に座ってい 

   る。

運転手の声「…まもなく消灯致します」
   寛子は静かに目を閉じる。

○JR渋谷駅・改札
   スマホを耳にあてている渡部。
渡部「…今、向かっておりますので。はい、失礼します」
   スマホをズボンの尻ポケットに仕舞う。
   改札で、Suicaを電子機器に当てて通り過ぎようとする渡部。改札の扉が

   閉まり、渡部は舌打ちをする。
   戻ろうとして後ろの客とぶつかる。
渡部「(下を向いたまま)あ、すいません」
昌子「あ、淳史君!」
   石原昌子(43)が目を見開き、笑って立っている。
渡部「あ…昌子さん。偶然ですね」
昌子「最近来てくれないじゃない。寛子ちゃんは元気にしてるの?」
渡部「(嫌そうに)…あ、あいつとは別れたんで。あ、俺、急いでまして…。じゃ」
昌子「え、どうして…」
   渡部は切符売り場でSuicaにチャージをし、渡部を見ている昌子に頭を下

   げると、改札の中に消えていく。
昌子「…」

○山手線・内回り・車内
   窓の向こうを見ている渡部。
   ふと、車内広告に目が行く。
   若いタレントの女の子が美味しそうにプリンを食べている広告が貼ってある。
寛子(声)「プリンはミルクプリンしか認めないから」

○(回想)渡部の部屋(夜)
   3連にくっついているプリンを持って、
   腰に手を当てて立っている寛子。
   座って、面倒くさそうに寛子を見上げている渡部。
渡部「それしかなかったんだって。寛子の好きな奴はここらのコンビニにはないだろ」
寛子「知ってるよ。なのに、淳ちゃんがそれ食べちゃって、悲しんでるんでしょ…私、隣駅のコンビニにまで、自転車で行って、買ってるんだからね」
渡部「そんな暇ないんだよ。仕事が忙しいって言ってるだろ」
寛子「昔は…もっと優しかったし…最近は何でも仕事、仕事で…休日も寝てばっかり。東京観光も全然行けてないじゃん」
   渡部、小さい机に拳をどんっと落とす。
渡部「文句ばっか言うなよ。プリンくらいで」
寛子「…もういい」
   寛子は悲しそうな顔をして、部屋を出ていく。

○(元の)山手線・内回り・車内
   プリンの広告を再び見る渡部。
   渡部、スマホを取り出し、写真フォルダを開く。
   部屋でくつろいでいる寛子の姿、浅草寺の前でピースをしている寛子と渡部の

   姿…渡部はフリックする指をとめる。
渡部N「一緒にいたって…これからだって、うまくいくはずなかった…」
   スマホのホームボタンを消して、スマホをしまい、再び窓の外を見る渡部。
○渋谷・高層ビル・オフィス(夜)
   誰もいないオフィス。デスクに座って、
   パソコンに向き合っている渡部の上にだけ、電気がついている。
   渡部は溜息をついて、背伸びをする。
   スマホを取り出し、見る。通知が一つとない画面。渡部、スマホをしまう。
渡部「…腹減ったな…」

○居酒屋『こころ』・店内(夜)
カウンターの中で忙しそうに接客している昌子。
   カウンター席に中年の客が数人、テーブル席も全て埋まっている店内。
   引き戸が開き、渡部が入ってくる。
昌子「いらっしゃーい」
渡部「…どうも」
   渡部はカウンターの端の席に腰かける。
昌子「(からかうように)傷心の淳史君だ」
渡部「別に…俺から別れようって言ったし」
昌子「…そう?」
   昌子はおしぼりを渡部に差し出す。
渡部「…生、ジョッキで」
昌子「はいはい」
   × × ×
   人の少なくなった店内。
   昌子、渡部が肩を並べてカウンター席にいる。
昌子「…8年か…高校の時から付き合ってて、二人で一緒に上京して…お互いに忙しく仕事をして…余裕がなくなっちゃったのかもね」
渡部「…しばらくいいですよ…面倒なことは…あ、そういえば、大口の取引が決ま
って…半年通った甲斐があったよ」
昌子「…それ、寛子ちゃんに聞いて欲しかったんじゃないの?私なんかじゃなくてさ」
渡部「…別に」
昌子「…まあ、いいけど」
   昌子は立ち上がり、カウンターの中に入り、芋焼酎の瓶を持ってやってくる。
昌子「…これ、寛子ちゃんがね…淳史君にって…ちょっと前に、仕入れてあったのキープしておいてって。でも…もう、二人で飲むことはないのね…寂しいわ」
   昌子はカウンターのテーブルの上に、芋焼酎の瓶を置いて、カウンターに戻る

   と洗い物を始める。
   渡部、瓶を手に取り、黙りこむ。

○渡部の部屋・居間(真夜中)
   氷入りのグラスに、芋焼酎を注ぐ渡部。
   グラスに口をつけながら、机の上に置かれた手紙を手に取り、開ける。
   手紙の上にまるっこい字が並んでいる。
寛子(声)「8年間…ありがとう。私の青春は淳史だった。東京に行くって淳史が行
った時に、迷わずついていって良かった。一緒に居酒屋をはしごしたことも、プリ
ンのことで喧嘩したことも全部…全部いい思い出。私は絶対幸せになるから。淳史も元気で、そしてまた恋をして。寛子」
   淳史はスマホを取り出して、寛子に 電話をかける。
電話の声「…この電話番号は現在使われておりません…」
   淳史は、スマホから耳を離し、呆然とする。
   淳史は立ち上がり、台所に行き、冷蔵庫を開ける。ミルクプリンが中にある。
   淳史はミルクプリンを手に取り、蓋を開け、近くのスプーンを掴み、プリンを

   口にかきこんでいく。
   淳史の目からぽとっと涙が零れる。
淳史「…俺が言ったんだ…もう別れようって」
   淳史、肩を震わせて、嗚咽する。
淳史「…まだ…好きなのに…」
   ミルクプリンの空の容器が床に落ちる。

20枚シナリオ『帽子』

『愛しのノワール

 


☆人物
北河(植野) 凜々子(27)専業主婦
古澤 仁太(27)宅配ドライバー
北河 悟(29)凜々子の夫
北河 愛莉(5)凜々子の娘
露店のおじさん
宅配員

 

○神社(夕方)
   色鮮やかな露店が並んでおり、子供たちが人ごみの中を走り抜けていく。
   一人の子供が、浴衣姿の北河(植野)凜々子(17)にぶつかる。
子供「あ、ごめんなさい!」
   子供はぺこっと頭を下げると友達の待っているところに走って去っていく。
   黒いキャップを目深にかぶった古澤仁太(17)が凜々子にかけよる。
   手には綿あめが二つ。
古澤「…大丈夫?」
凜々子「うん。あ、ありがと」
会場のアナウンス(声)「18時から予定どおり、清州川花火大会が開催されます。混雑が予想されますので、席取りは無理のないようにお願いいたします」
  凜々子は黙っている古澤を見上げる。
  黒いキャップに隠れて、古澤の表情が見えない。
凜々子「花火大会、楽しみだね」
   古澤は遠くを見ながら、聞く。
古澤「…他に何かいる?花火大会見に行くなら、焼きそばとかそういったのとか…」
凜々子「私はどっちでもいいけど…」
   古澤は凜々子の頭を大きな手でぽんっと叩くと、にかっと笑う。
古澤「…買ってくる」
   古澤は人ごみに紛れていく。
   凜々子は小さな溜息をついて、神社の賽銭箱の前の階段に腰かける。

○清州川・上空(夜)
   真っ暗な空に大きな花火が上がっている。人々の歓声、拍手がわきあがる。

○神社の境内(夜)
   階段に腰かけて古澤を待っている凜々子は、腕時計を見て、溜息をつく。
   露店のおじさんが凜々子を見かけ、声をかける。
露店のおじさん「あれ、お嬢ちゃん、花火始まってるよ」
凜々子「…人を待ってて」
   露店のおじさんは客が来て、店に戻る。
   凜々子は頬づえをつき、空を見上げる。
   花火が遠くのほうで明るく光っている。

○ショッピングセンター・店内
   凜々子(27)、北河悟(29)と、北河愛莉(5)が子供服を見ている。
   愛莉が飾ってある帽子を手に取り、おしゃまにかぶって回ってみせる。
悟「愛莉は本当に可愛いなー」
凜々子「愛莉、どれにするの?」
   悟は別の棚から白いフリルのついた黒いキャップを持ってくる。
悟「愛莉、これも可愛いぞー」
   凜々子、黒いキャップを見て黙り込む。
愛莉「えー、黒なんて男の子の色じゃん。ねえ、ママ。こっちのほうがいいよね」
   愛莉はピンクの帽子をひらひらさせる。
凜々子「あ…ママもピンクがいいかな」
   凜々子は慌てて笑みを浮かべる。

○道路
   背の高い向日葵が風に揺れている。
   宅配車から大きな段ボールをおろしている古澤仁太(27)。
   古澤は黒いキャップを目深にかぶり直し、段ボールを持って、配達先の家のチ

   ャイムを押す。
   家には「北河」の表札。

○北河の自宅・子供部屋~玄関・内
   ベッドで眠っている愛莉、隣で椅子に座りながらウトウトしている凜々子。
   チャイムの音がして、凜々子ははっと起きて、玄関に向かう。

○北河の自宅・玄関・外
   凜々子が扉を開ける。
   大きな段ボールを持った古澤は黙って伝票を凜々子に差し出す。
   凜々子はボールペンで伝票にサインする。
古澤「…玄関の中までお持ちしますか」
凜々子「あ、お願いします」
   
○同・玄関・内
   古澤が段ボールを玄関に置く。
   凜々子は黒いキャップを見て黙り込む。
古澤「…ありがとうございました」
   古澤は玄関からさっと出ていく。
   凜々子は荷物を見ているが、はっと振り返って首をかしげる。
凜々子「…まさか…」

○配達車・車内
   古澤は黒いキャップを脱ぎ、見つめる。
古澤「…10年か…俺のことなんか覚えてないか…」

○道
   家を飛び出してきた凜々子、辺りを見渡し、停車している配達車にかけよる。

○配達車・車内
   凜々子に気が付く古澤。
凜々子「…古澤くん?!」
   凜々子が懐かしそうに笑っている。

○公園(夜)
   黒いキャップをかぶり、シーソーに腰かけている古澤。凜々子が走ってやって

   くる。古澤は手をあげる。
古澤「来てくれてありがと…家は大丈夫?」
凜々子「主人が見てくれてるから…」
   近くのベンチに、少し離れて座る古澤と凜々子。
古澤「…怒ってる?」
   凜々子は古澤のほうを見て、笑う。
凜々子「10年も怒り続けるなんて、すごいエネルギーいると思うけど…」
古澤「…はは、俺のことなんか忘れてるよな」
   凜々子は黙っている。
   古澤は黒いキャップを脱ぎ、頭をかく。
   凜々子はふっと笑う。
凜々子「よくかぶってたね、それと同じの」
古澤「…たまたま転職したら、ユニフォームと帽子が黒だった」
凜々子「…わたしね、仁太のこと思い出してたよ、それ、みるたびに…」
古澤「…ごめん。あの時は。凜々子が泣くだろうなって想像したら、引っ越すなんて言えなかったんだ」
凜々子「おいてけぼりの方が辛いよ…」
   古澤は凜々子をじっと見つめ、そっと口づけする。凜々子は目をつぶる。
   
○北河の自宅(夜)
   寝室で寝ている愛莉と悟。
   寝室のドアを小さく開けて、二人を見つめる凜々子。

○道(朝)
   自転車に乗って家に戻ってきた凜々子、道に停まっている配達車に気が付く。
   配達車の窓が開き、古澤が顔を覘かせて、凜々子に笑いかける、凜々子は戸惑

   ったように笑う。

○配達車・車内(朝)
   助手席に乗っている凜々子、車を走らせている古澤。
古澤「この前は…ごめん」
凜々子「…え?」
古澤「…凜々子にキスしたこと」
   凜々子は前を向いて、黙りこむ。
古澤「10年前に気持ちが戻っちゃって、…ダメだって思いより、凜々子のことを」
凜々子「(遮って)言わないで」
古澤「こんな偶然はないと思うんだ…あの時、
別れたけど…でも、俺は…」
凜々子「…私、ずっと待ってたよ。大好きだったから…。そんな待ちぼうけの人生から、私を拾ってくれたのは…それは」
古澤「…俺、じゃなかったね」
   古澤は道に車を停める。黙り込む二人。
凜々子「仁太の10年、私の10年、それぞれに幸せだと思えるものだったはず。だから、…昔のことで、懐かしんで、今を台無しにしてもいいのかな…」
   古澤は凜々子の手をとり、握りしめる。
古澤「凜々子は今が幸せ、なんだね」
凜々子「…うん」
   古澤は凜々子を抱き寄せる、凜々子は古澤の胸に顔をうずめる。

○北河の自宅・玄関・外 
   凜々子がドアを開けると、赤い帽子の宅配員が段ボールを持って立っている。
凜々子「赤…」
宅配員「あ、帽子ですか。コーポレートカラーが変わったんです。慣れませんけどね」

○北河の自宅・リビング
   開いた段ボール、開封された手紙がテーブルに置いてある。
   凜々子が黒いキャップをかぶって、リビングの鏡を見つめている。
   リビングに愛莉が入ってくる。
愛莉「なにそれー、黒なんて変だよー」
   凜々子は黒いキャップを脱ぎ、まじまじと見つめる。
凜々子「…どうして、こんなの忘れられなかったんだろ」
  黒いキャップと手紙が段ボールにしまわれる。
凜々子(声)「さようなら、愛しのノワール

20枚シナリオ『鏡』

『おしわに紅』

 

 

☆人物
EKKO(前原 吾郎)(48)メーキャップアーティスト
前原 麗子(52)吾郎の姉
前原 さと(76)吾郎の母
YUJI(橋本 有司)(30)メーキャップアーティスト
大里 千登勢(43)ベテラン女優
桜川 はる(21)売れっ子モデル

 

○楽屋
   EKKO(48)が桜川はる(21)にメイクを施している。
   はるはポーチからグロスを取り出し、EKKOに渡す。
はる「仕上げ、これ使ってもらっていいですか」
EKKO「…YUJIのやつね。…最近流行っているわね」
   EKKO、グロスを指でつまみあげて、憎たらしいものを見るかのよう
   に睨みつけている。
はる「あ、でもEKKOさんがCMしてる美容液、ちゃんと使っているから」
EKKO「…いいのよ、…いまや、YUJIの実力は若手ナンバーワンだし…」
はる「やっぱり気にしているの?」
EKKO「彼からしたら私なんてアウトオブ眼中かもしれないけどね」
はる「え、それどういう意味?」
EKKO「…昭和ジョーク。聞かない優しさを覚えてちょうだい」
   EKKOは目を瞑る。そして、目の前の鏡を見る。
   はるの顔の上に、ふわっとメイクをしたはるの顔が浮かんで見える。
EKKO「つかまえた!」
はる「来た?今日のイメージ」
EKKO「びんびん来た…今日はピンクね。ラッキ~メイクアップ!」
  EKKOは腰をくねらせて決めポーズをとる。

○郊外にあるマンション・寝室
   すっぴんになったEKKOが大きなベッドで大の字になっていびきをかきなが

   ら眠っている。
   前原麗子(52)がバンとドアを開けて入ってくる。
麗子「吾郎!起きろ!」
   麗子は履いていたスリッパを脱いで、EKKOの頭を殴る。
   EKKO、跳ね起きる。
EKKO「何すんのよ」
麗子「今日は母さんの病院に行く約束でしょーが!いつまで寝てるのよ」
EKKO「…姉ちゃまだけで行ってよ」
麗子「あんたね…こんな時にまで意地を張るのやめてよね。もう先が長くないんだ
から」
EKKO「…すっぴんで行かないとダメ?お肌の調子が悪いから隠したいわ」
麗子「いいおっさんなんが肌の調子もへったくれもあるか」
   麗子、EKKOの首根っこを掴み、
   ベッドから引きずり下ろす。
   EKKOはベッドにしがみついている。

○総合病院・病室
   病室の患者たちと談笑している前原さと(76)。がらっとドアを開けて、麗

   子とEKKOが入ってくる。
麗子「母さん、調子よさそうじゃない」
   さと、麗子の後ろに隠れているEKKOを見て鼻で笑う。
さと「なんだ、吾郎も来たの。今日はあのズラかぶってないんだね」
EKKO「姉ちゃまがうるさいから…本当はこんなの嫌よ…」
さと「あんた、見たよ。雑誌の恋愛コラム書いてるんだって?…おかまで独身のあんたが、なーんで恋愛論とか語っちゃうんだろうね」
EKKO「おかまって女子受けがいいのよ。男心も分かるけど女心も分かるっていうか」
さと「へっ、男のくせに化粧だ、恋愛論だ、私は子育てを失敗しちまったね…まあ麗子も嫁に行かなかったし…あーあ」
麗子「私のことはほっといて」
さと「あ…今日はイケメン医師が回診なんだった…」
   さとは引き出しから鏡を取り出し、髪の毛を手で整える。
   EKKO、嬉しそうに身支度をしているさとを懐かしそうに見る。

○撮影スタジオ
   EKKOがメイク途中の大里千登勢(43)に叱りつけられている。
千登勢「こんなんじゃ、皺が隠れてないじゃない!もう嫌!」
EKKO「大里さん、でも目尻の皺がとってもチャーミングなの」
千登勢「長年お願いしてきたけど…今度からYUJI君に来てもらうことにするわ」
EKKO「…え…」

○道(夜)
   YUJI(30)がジョギングをしている。道の途中から併走してきたのはE

   KKO。
YUJI「お疲れ様です」
EKKO「お疲れ様…あなた、…ちょっと話があるのよね」
  EKKO、YUJIについていけず息がどんどん荒くなる。
  YUJI、スピードをあげる。
YUJI「大里さんの件ですよね…でも、僕が言いだしたことじゃないんで」
EKKO「大里さんはね、デビューした時から私がメイクしてきたの…あの人肌が弱くって濃いメイクには耐えられないの。厚化粧はダメだからね」
YUJI「…お客様の望み通りにするが僕たちの仕事でしょ」
   YUJI、ふっと笑い、走り去る。
   肩で息をして悔しそうに立ち止まるEKKO。
○前原家(夜)
   さとの通夜が行われており、親戚が集まり宴会をしている。
   棺に入っているさとの近くで、泣きじゃくる麗子、EKKO、麗子の肩を優し

   く撫でている。
麗子「ねえ、…母さん、死んでるみたいに
見えない…今にも悪態ついてきそう」
EKKO「そんなこと言ったら、母さんが天国から唾とばしてくるよ」
麗子「…あんた、母さんをもっと綺麗にしてやってよ…プロでしょ」
EKKO「…私ね…鏡に写っている姿を見ると自然とイメージが湧くのよ…でも…もう母さんは…」
麗子「…最期なんだから、お願い」
   EKKO、棺の中のさとをじっと見る。そして、仕事道具の中から、一本の赤

   いルージュを取り出す。
   EKKOはさとの唇に赤いルージュを丁寧に塗る。そして、手鏡を取り出し、

   さとの胸に置く。
麗子「…赤い口紅…母さんらしいね」
EKKO「私…母さんの口紅をひく姿がすごく好きだったわ…鏡ごしに、母さんが
いつも笑い返してくれていたのを思い出した」
   麗子は顔をくしゃくしゃにして泣きだす。
EKKO「…今まで、この仕事をしてきたのは、この瞬間のためだったのかもしれ
ない…大切な誰かの、一番綺麗な時を作るために。母さん、綺麗よ。ほんとに」
   棺の中のさとは紅のはえた綺麗な顔で静かに眠っている。

○楽屋
   YUJIが千登勢の顔におしろいをはたいている。
   楽屋のドアをノックして、EKKOが顔を覗かせる。
YUJI「…何ですか」
EKKO「…邪魔するつもりはないんだけど…私…」
千登勢「EKKO…」
EKKO「…いつも、鏡に写る女優さんやモデルさんを見て、ふわってイメージが湧いて、それ通りにメイクをしてきたけど…初心に戻って、もっと向き合ってメイクしたいって思ったの。…お願い、YUJI君のメイクを勉強させて!」
   EKKO、YUJIに頭を下げる。
   YUJI、頭をかいている。
   千登勢、YUJIの顔をちらっと見てから、EKKOに顔を向ける。
千登勢「…違うのよ…EKKO」
   EKKO、顔をあげる。
YUJI「…実は、千登勢さん、やっぱりEKKOさんのメイクが良いって」
EKKO「え?」
千登勢「…YUJI君のメイクも好きだけど…チャーミングに年を取る楽しみを教えてくれた、EKKOのメイク…やっぱり、私はあなたじゃないと…」
   千登勢、EKKOのほうに歩いていき、手をとる。EKKO、涙ぐむ。
YUJI「勉強しなきゃいけないのは俺のほうですね…」
   YUJI、腕を組んで考え込む。
   EKKOは黙ってメイク道具からグロスを取り出し、ウィンクする。
YUJI「…あ…使ってくれてるんですか…ありがとうございます」
   YUJI、はにかんだように笑う。
EKKO「…勉強したいなら、私…手取り足取り教えようかしら」
  EKKOがYUJIの腕をさする。
   YUJI、大げさに首を横に振る。
   EKKOと千登勢は顔を見合わせると、あははと笑う。